レコード店の棚に付けられたコーナー名がジャンル名になったものとすれば、〈渋谷系〉、〈音響派〉とかが思い浮かぶ。ここ数年話題の〈シティ・ポップ〉という仕切り盤がかつて存在したかどうか知らないが、この講義集を読むとあったことがわかった。大抵、ジャンル名をつけるのはある種のブランド化でマーケティングの基本的なもののひとつだ。そういうディレクションでイメージを作っていた時代があったのだ。国内でかつてシティのイメージを拡散した音楽が、世界で共感されている。この本もこうしたシティ・ポップの反響を受けて企画された。原盤ビジネス再構築の可能性を示し、都市の音景観に仕込まれたエキゾの謎を浮かび上がらせる。