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ホセ・ジェイムズのプロデュースによる若き天才ドラマーがヴォーカルにも挑戦

 とんでもない逸材が現れた。ホセ・ジェイムズのバンド・メンバーであり、若き天才ドラマーとして台頭してきたジャリス・ヨークリーである。彼の初のソロ作『サムタイムス、レイト・アット・ナイト』は、ホセが共同プロデュースを担当。そのホセのパートナーであるターリ、BIGYUKIらが参加している。ヒップホップ、ジャズ、R&B、ロックなどが混交された、ジャンル横断的なサウンドは実に刺激的。彼も敬愛するマーク・ジュリアナの作品に続く、新世代のビート・ミュージックといった趣もある。ジャリスは教会で3歳から演奏を始め、バークリー音楽大学を卒業。様々なドラマーの薫陶を受けたという。

 「テリ・リン・キャリントンからは、ドラムセットのダイナミックな性質について多くを学んだ。ダニーロ・ペレスは人生と音楽は一体であることを教えてくれた。僕のドラム・ソロがとてもクリエイティブな理由のひとつは、彼が〈人生はインスピレーションの無限の井戸だ〉と教えてくれたから。もしソロをやっていてアイデアがなくなったら、一見シンプルなものからインスピレーションを得ることにしている。朝食に何を食べたかとか、外の天気はどうかとか、どんな靴を履いているかとかね」

JHARIS YOKLEY 『Sometimes, Late At Night』 Rainbow Blonde/コアポート(2024)

 好きなアーティストには、ロバート・グラスパー、カニエ・ウェスト、クリス・デイヴ、ディアントニ・パークスらの名前が挙がる。なお、「曲作りのほとんどはドラムを加えてから形になり始めた」そう。確かに、タイトで引き締まったグルーヴが本作の推進力となっているのは間違いない。ビリー・コブハムもかくや、という苛烈なドラム・ソロもフィーチャーされている。圧が高めでハイファイかつワイドな音像も魅力的だ。そして、最大の聴きどころは、パワフルでありながら、滋味に富む彼のヴォーカルである。

 「実は歌うのは今回が初めてなんだよ。高校生の頃の自分に、アルバムで自分が歌うことになるなんて言っても信じなかっただろうね。このアルバムを作るまでライヴで歌ったこともなかったけど、ホセが僕に次のステップに進むよう背中を押してくれたんだ。僕の好きなヴォーカリストは、ジェイムス・ブレイク、テーム・インパラのケヴィン・パーカー、トム・ヨーク。今はゆっくりと、自分の歌声に心地よくなれるよう努めているよ」

 ジャリスのドラマーとしての現時点での集大成であり、ヴォーカリストとしての起点となる重要作。そう言っていいだろう。今後の活躍が楽しみでならない。