新作リリースと来日公演がセットになっているアーティストには親近感を覚える。聴いたばかりのアルバムを立体的な音として感じることで作品がより身近なものとなるからだ。

ホセ・ジェイムズも、この10年近く、コロナ禍の期間を除くと新作を出すたびにそれにちなんだ来日公演を行なっている。昨年は、7〜8月にエリカ・バドゥへのトリビュートアルバム『On & On: José James Sings Badu』を携えた公演をビルボードライブ東京と大阪で開催。その前後にも、5月にフリーライブイベント〈TOKYO M.A.P.S〉に出演し、11月にはピアニストの角野隼斗との共同公演をビルボードライブ東京と大阪で行なった。

こうした頻繁な来日のおかげでホセのことを深く知ることができているし、彼にとっても訪日は少なからず創作の原動力になっているのではないかと感じている。妻のターリことタリア・ビリグとは来日時に時間があると高尾山に登っていると話していたが、2020年作『No Beginning No End 2』に収録した“Oracle(高尾山)”は同所でのフィールドレコーディングを交えたネオソウル〜ジャズ的なスロウだった。日本のファンが自分の音楽を心から愛し、理解してくれるという安心感も、彼をたびたびこの地へと向かわせている理由の1つであるように思える。

そんなホセが、今年も新作にちなんだ来日公演を9月1日(日)にビルボードライブ横浜、9月2日(月)と3日(火)にビルボードライブ東京にて行なう。〈José James presents 1978〉という公演名の通り、自身の生誕年をタイトルに冠した最新アルバム『1978』を携えてのショウ。セットリストも新作からの曲がメインになることが予想される。

ジャイルズ・ピーターソン主宰のブラウンズウッドから2008年にデビューし、2012年から在籍したブルーノートを経て、現在は妻ターリと共同で立ち上げた自主レーベル=レインボー・ブロンドで活動するホセ。そんな彼が、ブルーノートから最後に出したビル・ウィザースへのトリビュート・アルバム『Lean On Me』(2018年)の制作中に〈人々に喜びを与えられるような曲を書いてみたくなった〉と思い立ち、5年をかけて完成させたのが今年4月にリリースした『1978』だ。

『No Beginning No End 2』のツアーなどで結束を強めたミュージシャンたちの力を借りて録音した『1978』は、ホセの音楽体験や人生経験を反映した自伝的とも言えるアルバムだ。本人いわく〈(敬愛する)リオン・ウェアとJ・ディラが出会って僕のために作ってくれたアルバムという雰囲気にしたかった〉とのこと。ジャズの側面から、ヒップホップやソウル/R&Bにアプローチしてきたホセの音楽キャリアを総括したような内容だが、その中にも大別して3つほどのテーマがある。

1つ目は、1978年前後のソウルやファンクへの愛。アルバムの前半には、リオン・ウェアが手掛けたマーヴィン・ゲイ、さらにはクインシー・ジョーンズが手掛けたマイケル・ジャクソンへのオマージュと呼べるセクシャルでダンサブルな曲が並んでいる。先行シングルだったディスコ調の“Saturday Night (Need You Now)”は、6月にルイ・ヴェガのリミックスも登場した。

2つ目は、そうしたソウルミュージックを含むアメリカの大衆音楽に及んでいたラテンやアフリカ音楽の影響。コンゴ出身ベルギー在住ラッパーのバロジやアフロ・ブラジルの気鋭シェニア・フランサとの共演を通して、音楽におけるブラック・ディアスポラ(世界に散らばった黒人たち)の底力を示している。

そして、3つ目のテーマがブラック・ライヴズ・マター。横暴な警察官たちの犠牲になったトレイヴォン・マーティンやジョージ・フロイドに捧げた曲でホセは黒い拳を掲げる。〈正当防衛法〉がまかり通るフロリダ州には出向かないという主張や、ジョージ・フロイドが息を止められた故郷ミネアポリスの路上(“38th & Chicago”)近くで似たような扱いを受けた過去。チャド・セルフのピアノやペドリート・マルティネスのラテンパーカッションなどが生々しく響くアルバムの終盤からは、ホセの揺るぎない思いが滲み出す。

そんなストーリー性を持った『1978』の楽曲が、プレイヤーたちの演奏も含めてどう再現されるのか。今回の来日公演ではその部分に注目が集まる。バンドメンバーは、過去の来日公演やアルバムのレコーディングでお馴染みの面々。サイドボーカルの妻ターリ、カッティングエッジなセンスとスキルで八面六臂の活躍をする鍵盤奏者のBIGYUKI、その両人が参加したリーダーアルバム『Sometimes, Late At Night』を今年レインボー・ブロンドから発表した気鋭ドラマーのジャリス・ヨークリーは、エリカ・バドゥのトリビュートアルバムにちなんだ昨年の公演に続いての来日となる。

さらに、ジャリスとともに新作『1978』のサウンドを支えたギタリストのマーカス・マチャド、今年2月にミシェル・ンデゲオチェロの来日公演にも同行したベーシストのカイル・マイルズも再び登場する。どのメンバーも自己名義のリーダー公演が成立する腕利き揃いで、ホセの音楽に彩りを加えながらサポートにとどまらない妙技を披露してくれるはず。いわば主役が6人いるようなステージ、その中でリーダーシップをとるホセの采配ぶりにも注目しながら今回のステージを楽しみたい。

 


LIVE INFORMATION
José James presents 1978

ホセ・ジェイムズ
2024年9月1日(日)ビルボードライブ横浜
1stステージ
開場/開演:15:00/16:00
2ndステージ
開場/開演:18:00/19:00
https://www.billboard-live.com/yokohama/show?event_id=ev-15083

2024年9月2日(月)、3日(火)ビルボードライブ東京
1stステージ
開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ
開場/開演:19:30/20:30
https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-15084

■チケット料金 (飲食代金別)
【横浜】
DXシートカウンター:10,900円
S指定席:10,900円
R指定席:9,800円
カジュアルセンターシート:10,400円(1ドリンク付)
カジュアルサイドシート:9,300円(1ドリンク付)

【東京】
DXシートDuo:24,000円(ペア販売)
Duoシート:22,900円(ペア販売)
DXシートカウンター:12,000円
S指定席:10,900円
R指定席:9,800円
カジュアルシート:9,300円(1ドリンク付)

※本公演はClub BBL会員、および一般販売をWEB受付のみ実施いたします
※法人会員は電話にてご予約承ります

■メンバー
ホセ・ジェイムズ(ボーカル)
ターリ(ボーカル)
BIGYUKI(キーボード/シンセサイザー)
マーカス・マチャド(ギター)
カイル・マイルス(ベース)
ジャリス・ヨークリー(ドラム)

後援:J-WAVE