NYを拠点に活動するキーボーディスト・BIGYUKI。ア・トライブ・コールド・クエストやJ.コール、ビラルらに起用されたことで注目を集め、近年ではカマシ・ワシントンやホセ・ジェイムズ、アントニオ・サンチェスらのサポートも務め、NYの第一線で活躍するミュージシャンの一人だ。
コロナ禍においてもBIGYUKI名義でロックダウン下の2020年12月にはEP『2099』、昨年10月にはフルアルバム『Neon Chapter』をリリースして、自身の目線から時代の空気を切り取ってみせた。
その一方で気になるのは、CHAI“チョコチップかもね”(2021年作『WINK』収録)やAwich“TSUBASA”(2022年)でコラボレーションし、若手作曲家・坂東祐大が音楽を手掛けたTVドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の挿入歌にグレッチェン・パーラトと共に参加するなど、日本の音楽家との接点も増えているように感じることだ。
2023年3月に約4年ぶりのバンド編成での来日公演の開催を控えたBIGYUKIに、待望のライブについて、日本との関わりについて話を訊いた。
やっとNYから仲間を連れてきてライブが出来る
――今回は2019年以来のバンドでの来日公演ということで、まずは前作『Neon Chapter』を2021年にリリースしてからのBIGYUKIさんの近辺の状況を伺ってもよろしいですか?
「NYでもナイトライフの生活は戻ってきている、むしろ戻ってきて結構時間が経っているように思いますね。でも昨年はロシアとウクライナの情勢で石油価格が高騰して、ヨーロッパでのツアーがキャンセルになったりもしました」
――日本では今まさに来日ラッシュになっています。
「らしいですね。そういった状況もあって、2019年以来やっとNYから仲間を連れてきてライブが出来るってことになったのが3月ですね。コロナ禍中に来日した時はソロでライブをしていたので」
きめ細やかなギタリスト=ランディ・ラニヨン、呼吸が合うドラマー=ジャリス・ヨークリー
――では、今回のバンドメンバーを紹介していただけますか? まずはギターのランディ・ラニヨン(Randy Runyon)から。
「ランディ・ラニヨンは、彼ほどきめ細やかに気を遣えるギタリストはいないんじゃないか?と思うギタリストですね。ギターヒーローみたいにその場を引っ張ることも出来るし、その瞬間に何が必要かを繊細に察知してそこを埋めることも出来る。テクスチャーとリズムとメロディーが全部できる頼れるやつです。
バークリー音楽大学の頃から知っていて、自分のソロ活動の一番最初から一緒に演奏していて、〈とりあえずランディがいたらなんとかなる〉っていう安心感を与えてくれるようなミュージシャンなんです」
――彼はプロデューサーユニットのブラストラックス(Brasstraks)とも共演しているそうですね。
「そうなんです。ブラストラックスがBTSに書いた曲(2020年の“Dis-ease”)でも作曲やギターを手伝っていて。最近は以前にましてメジャーな仕事をしたり、彼の活躍の場がすごく広がったりしてるの見て、ずっと一緒に演奏してきた自分もすごく嬉しく思っています」
――ドラムのジャリス・ヨークリー(Jharis Yokley)はいかがでしょう?
「ジャリスと初めて一緒に演奏したのは、2020年にホセ・ジェイムズのスタジオで演奏した時でした(2021年作『New York 2020』)。その時に、〈こんなドラム叩くやつがいたんだ!〉と思ったことを覚えています。
それから2年間ぐらいホセのツアーを一緒に回って、密に演奏する機会が増えて。去年の5月にはそのバンドで日本のビルボードライブにも来ましたね」
――彼のプレイが衝撃的だったのはどんなところですか?
「グルーヴが良くて、テクニックが素晴らしくて、それと同等に音楽的な理解もあるところですね。彼とは一緒に演奏していて〈エスパーか?〉と思うぐらい呼吸が合う瞬間があるんですよ(笑)。
あとは寝食とステージをともにしながら何ヶ月もツアーを回っていると、その人の本当の姿が見えてきたりするじゃないですか? でも彼はそういう中でも常に変わらず、コツコツと演奏を良くしていくんですよね。自分のバンドで演奏したのはNYで一度やったぐらいなんですけど、今回から一緒にツアーを回って演奏していくなかで、お互いに成長できる気がしています」