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Photo by Makiko Takada

活動初期の演出=金色の夢が復活

ここから後半戦がスタート。映画「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」のオープニングテーマ“Whatever Comes”におけるギターサウンドが冴えわたり、よりダンサブルに踊れるビートセンスが絶妙な“RAINBOW RAINBOW”では、プログラミングによって可変するドットミラーを活用したライティングによって宙に虹を描いた。そして、神秘的な神々しいサウンドをデジタルオーケストラのごとくひとりで繰り広げる“TK Solo”パートを挟み、待ちに待った最新曲“Get Wild Continual”の登場だ。Netflix映画「シティーハンター」のエンディングテーマ曲として、世界でも聴かれている最新バージョンの“Get Wild”。Continualとは“〈継続的〉を意味する。

勢いそのままに、1985年5月22日にリリースした3枚目のシングル“ACCIDENT”を、踊れるビートへ大胆にリプロダクション。メロディーの美しさを際立たせた2024年バージョンとして意気揚々とプレイ。人気曲“Get Wild Continual”後に、本作を演奏することは、まだTMが無名時代、当時ヒットに至らなかったことへのリベンジのようにも感じた。そして、狙い通り最高潮の盛り上がりを迎えたのであった。

Photo by Kayo Sekiguchi

ここで空気が一変して、TM NETWORK最重要ソング“Electric Prophet”へ。〈電気じかけの予言者〉という意味を持つ本作は、TM NETWORKが歩んできたシアトリカルなアーティスト性のすべて凝縮した作品だ。

宇都宮が大切に言葉のひとつひとつを紡いでいく。

今回のツアーのステージは俯瞰してみると、額縁のようにライティングが設計されている。光の渦がうねり、オーディエンスを没入させていく。その枠のような存在は、まさにワームホールのようにも見え、実は演奏されてきた楽曲はTM風に言えば時空を超えて別次元から届けられたオーパーツのような宝物に感じたのだ。“Electric Prophet”という名曲は、そんな夢心地な思いを肯定し、僕らを音楽という魔法へと誘ってくれる。そんな大切な楽曲である。

Photo by Kayo Sekiguchi

そして、ラストシーンへ向かって短めのカットされた金テープが客席へ向けて解き放たれた。これは初期ライブでお馴染みの〈金色の夢〉演出だったが、最終日の本日のみ復活された。

40周年ツアーながら、ヒットシングルの羅列という懐古主義に終わらず、自らやりたいことを意義ある実験性を持って挑戦していくTM NETWORKの凄み。彼らのライブにはMCもアンコールもないが、それはすべて作品性や世界観を第一に〈TMらしさ〉とはなんなのか? そんな自問自答してきた答えが本ツアーにあった。それは決してマニアックではなく、誰もに開かれたポップミュージックという入口を持つ最高峰のエンターテインメントだったのである。

本編終了後、いつも通りインストチューン“intelligence Days”とともに映画のようなエンドロールが流れ……本来ならばこのまま終わるはずだった。

だがしかし、いつもラストに驚かされるエンディングを告げる異常に音のデカい爆発音が鳴らない。