〈あなたへの歌〉をテーマに掲げた「第75回NHK紅白歌合戦」が昨夜、終了した。話題や見どころが数多くあったが、なかでも個人的にもっとも記憶に焼き付いたのはB’zのパフォーマンスだった。

まずB’zは、1988年の結成から36年で紅白へ初出場を果たした、という点が大きなトピックだった。老若男女問わず、お茶の間でも親しまれているバンドだけに意外だが、ファンが指摘しているようにB’zは〈大晦日は働かない、仕事をしない〉というスタンスだそうで、それも関係していたのだろうか。しかし今回は、2024年9月から放送中が始まったNHK連続テレビ小説「おむすび」のオープニングを飾る主題歌を担当したことも大きかったはずで、B’zはついに紅白へ初出場することになった。

そうして〈大晦日に働くB’z〉、しかも〈紅白初出場〉というダブルでレアな状況で登場したB’zは、予定どおり“イルミネーション”を披露。会場とは別のスタジオで、曲の内容に沿ってイルミネーションのように輝き、色を変えていく多数のライトが照らす舞台の上で演奏した。ピアノの音が強調されたおおらかなビートに乗り、稲葉浩志はマイクスタンドを持ち上げつつ、のっけから100%の熱唱。サビに入る前の「ハイビーム」に続く「ヘーイ!」という掛け声が実にかっこいい。後半の松本孝弘のギターソロでは、一瞬ライトハンド奏法が見られたのが印象深かった。

“イルミネーション”を演奏し終えると、マイクスタンドを置いた稲葉とギターを置いた松本はステージを降り、階段を降りていく。「えっ、何!?」「嘘⁉」「マジ⁉」と、大声を出してざわつき動揺する有吉弘行、橋本環奈、伊藤沙莉という司会の3人。映像はNHKホールに切り替わり、〈B’z〉のロゴが掲げられた暗い舞台が映されるなか、あの聴き馴染んだストリングスのフレーズが流れる。まさかの“LOVE PHANTOM”! 「長すぎる」とよく話題になる“LOVE PHANTOM”のイントロをたっぷりと使って期待を大いに煽ったあと、松本の強烈なピックスクラッチが鳴り響いた。「NHKホールでこんなに火柱を噴き上げて大丈夫なの……?」と心配になるほどの特殊効果を背景に、2人とバンドはヘビーのハードロックを全開でNHKホールに叩きつけた。

しかし“LOVE PHANTOM”の序盤では、なんと稲葉のマイクにトラブルが発生。「交差点を渡る」のあたりまで稲葉のマイクが反応していなかったようで、そこまでのパートにおいて稲葉はまったく動じることなく凄まじい声量でカバーする神業を披露した(若干ボーカルの音量が下がったように聞こえたが、メインではない別のマイクが拾っていたようだ。恐るべし)。そのあとすぐに音は回復したものの、ハプニングを地力で乗り越えてしまう、という恐るべきパフォーマンスを見せつけた。