CDの黄金期を生きたミュージシャンであり、ライターやビジュアルアーティストとしても活動するKotetsu Shoichiroによる連載〈CD再生委員会〉。前回では、CDの誕生から人口に膾炙するまでの歴史を綴ってもらいました。それに続く今回は、後編として1990~2010年代を振り返ります。CDが売れに売れた時代から、CDを売るためのビジネスが発展した時期、配信へのシフトなどによって一気に凋落した頃まで、CD全史を描きます。 *Mikiki編集部
1,000万枚以上売れた盤が続出したCD黄金時代
前回に続きCDの歴史編でございます。1982年に市場に登場し、わずか4年でレコードの生産数を追い抜いたCD。回る回るよ時代は回るディスクも回る。回り続けて1990年代、そして現在までのCDの道程を追っていきましょう。
1990年代というディケイドは、CDがレコードビジネスを劇的に塗り替え、頂点に上り詰めた黄金時代でした。1990年代に入るとCDの売り上げはすぐさまレコードのピーク(1978年)を追い抜き、その後も年々上昇し続けます。1990年代にアメリカで1,000万枚以上売れたCDを見てみましょう。
マイケル・ジャクソン『Dangerous』
セリーヌ・ディオン『Falling Into You』
ジェームズ・ホーナー『Titanic: Music From The Motion Picture』
メタリカ『Metallica』
ホイットニー・ヒューストン『The Bodyguard: Original Soundtrack Album』
アラニス・モリセット『Jagged Little Pill』
メタリカとかマイケルはいいとして、ニルヴァーナは? プライマル・スクリームは?という音楽マニアの不満も聞こえてきそうですが、まあ記録的な〈全米ヒット〉となるとこういったラインナップにもなりましょう。メジャーが調子いいからこそオルタナティブな音楽も盛り上がる、ということですな。
8cm CDとカラオケが生んだJ-POP全盛期とCDバブル
この傾向は日本も例外ではありません。1991年にバブル景気は崩壊したものの、日本の音楽業界の1990年代は〈CDバブル〉とでも言うべき狂騒の時代へ突入します。1970~1980年代には数えるほどしか無かったダブルミリオン超えのシングルヒットが1990年代には続出。Mr.Children“Tomorrow never knows”、CHAGE and ASKA“SAY YES”、米米CLUB“君がいるだけで”などなど、J-POP全盛期を象徴するラインナップ。今でも30オーバーのカラオケ定番曲としてお馴染みの曲ばかりですね。
そう、1990年代のCDバブルは、カラオケと切っても切り離せません。1980年代後半から始まったカラオケブームは、当初は中高年がターゲットで曲も定番のもの(=古い曲)が中心でしたが、1992年に通信カラオケが登場し、最新曲もカラオケで楽しめるようになったことで、若年層にも波及します。そして大抵の8cmシングルCDには、タイトル曲のインストゥルメンタルバージョンが収録されており、週末に控えたカラオケの〈予習〉には最適でした。
8cmシングルCDというフォーマットについては、近年のリバイバルも含め、ひと枠割いて紹介したいほどトピックも豊富ですが、8cmというサイズ感は子どもにとっても馴染みやすく、初めて買ったCDは“だんご3兄弟”や“めざせポケモンマスター”の8cmシングルだった、というご同輩も多いことでしょう。