Photo by Yuki Kawamoto

L’Arc~en~Cielが全13公演にもおよぶアリーナツアー〈UNDERGROUND〉を開催した。今回のツアーはコロナ禍以降初の声出し解禁ライブ、さらにこれまで披露する機会が少なかった楽曲にスポットを当てたコンセプトなどが大きな注目を集めた。

そんな誰もが待ち望んだツアーより、2024年4月6日と7日に開催されたさいたまスーパーアリーナ公演のオフィシャルレポートが到着した。7月にはWOWOWで放送・配信も行われるステージを、まずは詳細なテキストで体感してほしい。 *Mikiki編集部


 

完璧な美しさを放つ〈UNDERGROUND〉

L’Arc~en~Cielが約2年振りに開催、2月にスタートさせた全国ツアー〈ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND〉を完走した。これまでライブで披露する機会が少なかった楽曲たちに光を当てるコンセプトのもと、レア曲尽くしのセットリストで臨む冒険的かつ実験的なツアーだった。ファンクラブ限定の横浜アリーナ2Daysを残し、事実上のファイナルとして開催された4月6日、7日、さいたまスーパーアリーナでの一般公演の模様をレポートする。

メリーゴーラウンドを思わせる円形のセンターステージと、そこから伸びる4本の花道。LEDスクリーンを備えた天蓋と台座の間を紗幕が覆っている。開演前から雨音を含むアンビエントなSEが流れていて、次第に雨足が強くなると場内は暗転。入れ替わりに、無線制御のオフィシャルグッズL’ライトが観客の手元で色とりどりに点灯する。いよいよ開演である。

Photo by Hideaki Imamoto
Photo by Hideaki Imamoto

雨夜に浮かび上がる月と、ピアノの暗鬱な調べ。そびえ立つ古城に向かって羽ばたくカラスが咥えていた、種のような、光る楕円の物体をくちばしから落下。すると画面が切り替わり、地下室への階段を降りていく黒衣の4人をカメラが追う。フードを外しメンバーが一人一人大写しになると、yukihiro(ドラムス)が広げた掌からは砂が零れ、ken(ギター)の掌には風、tetsuya(ベース)は水、hyde(ボーカル)からは火が出現。集まった4人は同時に手をかざし、それらを地面に向かって放つ。カラスがくわえていた種と、メンバーが持っていたエレメントとが合体して、何かが生まれるのだろうか? そんな予感とともに、扉が開き光に向かって歩いていく4人の後ろ姿が映し出され、場内では大歓声と拍手が沸き起こった。ツアーロゴが出現し、ピアノの第一音が鳴り響く。赤く照らされた紗幕越しに始まった1曲目は、1994年リリースのアルバム『Tierra』収録の“All Dead”。メンバーのシルエットが亡霊のように浮かび上がり、姿はまだ見えず焦らされる。スノードームにステージごと閉じ込められたかのように白い破片が宙を舞い散り、紗幕を活かした演出の美しさに目を瞠った。

Photo by Hiroaki Ishikawa
Photo by Hideaki Imamoto

切り込むような鋭さで2曲目の“EXISTENCE”を放つと、紗幕が振り落とされ4人の姿が露わに。hydeは早速「Sing Out!」とファンを煽り、一体感を求めていく。続けざまに“THE NEPENTHES”を投下、緑の光で場内は染め上げられた。ステージからはスモークとファイアボールが噴き上がり壮観な眺めである。hydeは大きく脚を広げた低い姿勢で猛々しく咆哮、かと思えば澄み渡ったロングトーンを聴かせ、変幻自在な歌声で陶酔させた。

濃密なグルーヴ感で圧倒した序盤を経て、“砂時計”からはムードが変わった。天使の梯子を思わせる無数の白い光がステージを照らし、kenの繊細なギターカッティングがそこに漂う空気に色を付けていく。tetsuyaのベースが寄り添うように重なり、yukihiroの鳴らしたシンバルは光の粒を撒き散らすかのように煌めいていた。hydeは胸に手を当て一語一語を噛み締めるように歌唱。例えば〈幸せを望む事がその悲劇を呼んでいる〉など、歌詞には現代の時世を投影して聴くこともでき、その普遍性に唸らされた。深遠な世界観にすでに惹き込まれていたが、次曲“a silent letter”が始まると、さらに一段深い奈落が存在していることに気付かされた。青から白へのグラデーションで制御されたL’ライトは客席を星空のように色どり、さらに俯瞰で見れば、すり鉢状の底で回転し始めた円形ステージは、あてどなく銀河系を浮遊する大きな宇宙船のようだった。ツアー初日には虚ろなメランコリックさに魅入られたこの曲は、公演ごとに印象が変化。この日の表現からは、静かな祈りのような純粋無垢さを感じた。終盤、歌と演奏の昂りとシンクロして赤い光が加わっていく照明演出が鮮烈で、最後に静寂が訪れるその時まで、すべてが完璧に美しかった。

Photo by Hiroaki Ishikawa

煽情的なピアノが響き、真っ赤に染められたステージで“Ophelia”を披露。hydeはサックスを演奏、kenは腰掛けて煙草をくゆらせながらクラシックギターを情熱的に弾いた。滑らかにベースを奏でながら、コーラスも担うtetsuya。yukihiroは変化していくリズムをコントロールし、正確に繰り出していく。“Taste of love”は選曲そのものの驚きに加え、柵状の床下からステージを這うhydeを追うアングル、yukihiroのキックする足元を捉えるアングルなどを導入した画期的なカメラワークでも沸かせた。狂おしいギターソロを掻き鳴らすken。ピンスポットを集中的に浴びてtetsuyaがベースソロを奏でた瞬間、会場がどよめいた。〈愛している〉の歌唱をファンに委ね、歌い終えたhydeの目元は、涙か汗なのか、潤んでいるように見えた。