かねてからリスペクトを公言していたTHE NOVEMBERSが“Cradle”のカヴァーを発表するなど、再評価著しいL'Arc~en~Ciel。〈再評価著しい〉というか、2016年に結成25年を迎えてもなおファン層を拡大しながら国内外で活躍し、多くのリスナーやミュージシャンたちから尊敬を集め続けている、と言ったほうが正しいだろう。THE NOVEMBERSによるカヴァーのような例は、アイデンティティーを形成する重要な時期に音楽体験としてラルクの洗礼を受けたミュージシャンたちが表舞台で活躍するようになった、ということの証である。

一時的な活動休止期間はあるものの、その快進撃はX JAPANなどを除いてほとんど類例がなく、例えばONE OK ROCKのような海外に大きな支持基盤を持つバンドたちの活動にラルクが与えた影響力の大きさは計り知れないろう。そんなラルクのベーシストにしてリーダーのtetsuya=TETSUYAから、ソロ初となるEP『I WANNA BE WITH YOU』が届けられた。

昨年のシングル“愛されんだぁ I Surrender”から約1年ぶりとなる作品で、“I WANNA BE WITH YOU”“READY FOR WARP”“FATE”“Eureka”の4曲に加え、2001年のソロ・デビュー曲のセルフ・カヴァー“wonderful world(Acoustic Version)”が収録されている。

ダークでゴシックな世界観の楽曲、あるいは官能的なバラードを得意とする(という評価も一面的なものにすぎないが)kenやhydeの書く楽曲と比べ、ポップで疾走感あふれる楽曲として人気が高い〈testuya曲〉。代表曲は、バンドのデビュー・シングル“Blurry Eyes”にはじまり、“DIVE TO BLUE”“snow drop”“Driver's High”“STAY AWAY”……と枚挙に暇がないが、その持ち味はもちろん『I WANNA BE WITH YOU』でも発揮されている。

夏をコンセプトとした本作の幕開けにふさわしい“I WANNA BE WITH YOU”と続く“READY FOR WARP”は、TETSUYA印のメロディーが聴けるポップ・ロック・ナンバー。過去の〈TETSU69〉名義での作品と比べるとヴォーカリゼーションや表現力も熟練、かつフレッシュで個性的という域に。ソロ・アーティストとしての活動も18年目を迎え、〈円熟〉の一言では片付け難い音楽家・TETSUYAの個性を聴かせる。

3曲目の“FATE”は、打って変わってヘヴィーなギターとEDM風のサウンドが挑発的な楽曲。対照的にドラマティックで爽やかな“Eureka”では、TETSUYAの甘く軽やかな歌唱が心地良い。何よりTETSUYAのメロディーメイカーとしての才能を印象付けるのは、アコースティック・アレンジでむき身になった“wonderful world(Acoustic Version)”。総じて〈エヴァーグリーン〉という言葉がこれほど似合う音楽家もそういないだろう。