フランソワーズ・アルディが死去した。
フランソワーズ・アルディが亡くなったことは、仏ル・モンド紙などが伝えている。死因は喉頭がんで、2024年6月11日にパリにて息を引き取った。80歳だった。
フランソワーズ・アルディは1944年生まれ、パリ出身のシンガーソングライター/俳優。パリ9区ドマル通りで生まれ育ち、1962年のデビュー曲“Tous les garçons et les filles(男の子と女の子)”で成功を掴んだ。同年にデビューアルバム『Tous les garçons et les filles』を発表。1964年から英ロンドンでもレコーディングを開始し、『Mon amie la rose』(1964年)などの作品を吹き込んだ。
1968年には、“Comment te dire adieu(さよならを教えて)”を発表している。アメリカのポピュラーソング“It Hurts To Say Goodbye”にセルジュ・ゲンスブールがフランス語の詞をつけたもので、アルバム『Comment te dire adieu』とともにヒット。様々なカバーがのちに録音されたが、日本でも親しまれており、戸川純やカヒミ・カリィ、MEG、竹内まりやといった多くの女性シンガーがカバーした。
初期はロックンロールの影響を受け、イエイエ/フレンチポップのアイコンとして活躍、一時引退していた期間もあるが、オルタナティブロックに挑んだ時期もあるなど、晩年まで多彩な音楽活動を続けたアルディ。最後のスタジオアルバムは、2018年の『Personne d’autre』になった。2023年には、米ローリング・ストーン誌の〈史上最も偉大な歌手200人〉にフランス人として唯一選ばれている。
俳優としては、ジャン=リュック・ゴダール監督の「男性・女性」(1966年)のほか、1960~1970年代に映画へ出演。さらにファッションアイコンとしても名を馳せ、アンドレ・クレージュやイヴ・サン=ローラン、パコ・ラバンヌらファッションデザイナーから愛された。また占星術師や作家としても活躍するなど、多角的な表現者だった。
アルディは2004年にMALTリンパ腫に侵され、2021年に病状の悪化から歌手活動を引退している。
つぶやき、ささやくような歌声とアンニュイな雰囲気を纏った雰囲気が、唯一無二の魅力を放ったフレンチポップの象徴、アルディ。歌謡曲歌手から荒井由実(松任谷由実)らニューミュージックのシンガーソングライター、そして渋谷系のアーティストに至るまで、日本の音楽家にも多大な影響を与えた彼女の存在は実に大きい。惜しくもこの世を去ったカルチャーアイコンに、哀悼の意を表したい。