アイドル然とした王道ピアノポップ“Midnight City”
“Is it me?”のムードを引き継ぐのが、4曲目の“Midnight City”。作詞はCanchild、作曲は“GOAT”も手がけたDATSのMONJOEとFIVE NEW OLDのSHUNに加えてLOAR、Hiromu、編曲はLOARを除く作曲の3人という布陣。
こちらもソウルやファンク、あるいはAORの要素を強く感じさせるが、リズミカルにコードを鳴らすピアノが中心になっていることもあり、よりポップな印象だ。シカゴの“Saturday In The Park”(1972年)やビリー・プレストンの“Nothing From Nothing”(1974年)、それにベン・フォールズ・ファイヴの“Underground”(1995年)といった曲を想起させる、ジャズやソウル風味の軽快で爽やかな王道ピアノポップナンバー。
特に、この曲は、サビ始まりなのが何よりもフレッシュ。3人がユニゾンでボーカルをとるサビがいかにもJ-POPアイドル然としていて、Number_iが煌めくアイドルであることを今一度思い出させてくれる。また、ここでも岸がおいしいところをかっさらっていく。ラスサビ前、〈あの歌口ずさみながら〉と歌うところで高らかに声を伸ばしていくところが実にいい。
〈想像の遥か遠くの上〉に連れていかれる、ヤバすぎるヒップホップ“FUJI”
ポップな2曲が続いたところから急転して、問題(?)の“FUJI”である。コーチェラ2024のステージ〈88rising Futures〉に出演した際にも披露し、アメリカ人を中心にした観客の目の前でぶちかましたのがこの曲だった。
ファンカデリックやパーラメントといったPファンクのバンドで活躍したギタリスト、エディ・ヘイゼルばりのブラックロック的な歪んだギターが鳴り響いたかと思った直後に、逆回転のエフェクトが挿入され、ラッパー・神宮寺の登場だ。〈まずは1バース〉と力を込めていきなり叩きつけるかっこよさったらない。〈君の想像の遥か遠くの上/乗り込みなSpit/連れてく飛行機〉とリリックは続くが、まさに〈想像の遥か遠くの上〉に連れていかれる。息を吐き出すような発声で、ラップ用語で言うところのアドリブ(合いの手)を打楽器的に、リズミカルに打ちつけていくところも素晴らしい。息継ぎゼロ?と驚く勢いで言葉を詰め込んでいく岸のパートも最高で、ラストの〈君が応援にくるマジすごいこと〉の部分において甲高い声で駆け上がっていくところなど、“GOAT”におけるジョーカーばりの特異な演じっぷりを思い出させる。
和太鼓風の響きの打音をキック代わりに、破裂音のようなパーカッションをスネアドラム代わりに打つ、『Yeezus』(2013年)の頃のカニエ・ウェストのごときインダストリアルでミニマルなプロダクションのラップパート。それに対してコーラス(サビ)は、突然視界が広がるような爽やかさで、ヨナ抜き音階も用いた日本的なメロディを応用しており、かなり対照的だ。
2番のバースでは、オートチューンをかけたトラヴィス・スコット風の発声や、ウェストサイド・ガンなんかがよくやる発砲音を模したアドリブが加えられており、ヒップホップアーティストとしての3人が大暴れ。ポストコーラスの部分で〈ぶっちぎってくぜ〉と歌うのは、中間部では平野だが、最後は岸にスイッチしている。特に岸の〈ぶっちぎってくぜ〉はアカペラになっているので、キャラ立ちしまくった発声もあいまって、すさまじいインパクト。そして、曲の締めにおいて神宮寺が発する〈ヤバすぎるよ〉があまりにもセクシーで、心を撃ち抜かれる。ヤバすぎるよ。
“FUJI”も、“GOAT”と同様にODD Foot WorksのPecoriが作詞、SHUNが作編曲をしている。一方で、ヒップホップシーンを中心に活躍し、LDHのグループの曲も多数手がけるNAKKIDが作編曲に参加している点がポイントだろう。