快進撃を続ける3人

コーチェラ2024への出演、そして初の単独公演〈No.O -ring-〉の開催やSUMMER SONIC 2024への出演を控え、快進撃を続けているNumber_iの3人。元日の鮮烈すぎるデビューから、とんでもない勢いで作品を発表し、前へ前へと突き進んでいる印象だ。“GOAT”のレビューで〈2024年はNumber_iの年になるのかもしれない〉と書いたが、まさにそうなりつつある。

その“GOAT”のレビューを読んだファンのみなさんからのリクエストも多かったので、今回、少々今更ながらではあるものの、3月6日にリリースされたシングル『GOAT』の配信版に収録された表題曲以外のカップリング5曲、その音楽面について書いてみよう。

Number_i 『GOAT』 TOBE MUSIC(2024)

 

Number_iの音楽性の広さを証明するスロウジャム“Blow Your Cover”

幕開けの“GOAT”でリスナーを打ちのめしたかと思ったら、次の“Blow Your Cover”では、Number_iの3人はとんでもないギャップで聴き手を抱きしめる。高低差ありすぎて耳キーンなるわ!とツッコミたくなるような1、2曲目の展開。驚きに満ちた作品の構成だし、3人の音楽表現の幅の広さがこの2曲だけで語られているかのよう。

チルで優しい包容感がある“Blow Your Cover”は、空間性を強調するアトモスフェリックな電子音とエレクトリックピアノ、センシュアルなワウギター、トラップビート、シンセベースを中心に構成された曲。R&B用語で言うとスロウジャムに近いだろう。

Number_iは国内外のフェイバリットソングをよく紹介することでも知られているが、​5月に「JFN Special Life Time Audio 2024 ~My First Music~『14歳のプレイリスト』」へ出演した際に平野紫耀が選んだネリーの名曲“Dilemma”(2002年)や、年始のApple Musicプレイリストに入っていた久保田利伸の“Nyte Flyte”(2010年)のラインの曲だ。

とはいえ、“Blow Your Cover”は、硬いキックやトラップ風のハイハットなどによって、現代的なプロダクションで仕上げられている。作編曲は、IMP.の曲も手がけているLeo Anderson。ただしその正体は不明で、ひょっとしたら知られた作曲家の別名義かもしれない。

ボーカリゼーションの面では、まずは冒頭のささやくような神宮寺勇太の歌で“GOAT”とは真逆の世界を繰り広げ、岸優太が〈もう一切 日常はいらない〉と歌い上げるところからサビになだれ込んでいく展開が見事。さらに、終盤の岸の〈愛させて Once again〉の力強さ、〈More chocolate?〉から始まる3人の掛け合いも素晴らしい。作詞はMila Berryとクレジットされているが、こちらも謎の作詞家だ。

なお、ミュージックビデオが公開された4月12日には、スペッドアップ版やアカペラ、インストゥルメンタルを収めたシングルとして単独リリースもされた。

 

仕掛けが多い劇的なネオシティポップ“Is it me?”

3曲目の“Is it me?”は、ディスコやファンクのダンサブルな要素が強い。しかし、デジタルな質感や電子音が多用されていることもあり、現代J-POPのバリエーションにおいて定番の一つになってきているネオシティポップ風の曲だと思った。

イントロは、小田和正の“ラブ・ストーリーは突然に”へのオマージュを感じさせる鮮烈なギターのフレーズ。左右のチャンネルで刻まれるギターの小気味よいカッティングが全体的に強調されており、曲のグルーヴを形作っている。煌びやかなエレピとの絡み合いも、聴きごたえ十分だ。

とはいえ、仕掛けが多い曲で、サビの手前にはEDMにおけるドロップのパートが仕込まれている。2番に至っては、いきなりラップパートに突入し、神宮寺のポップで威勢のいい、いかにも日本語ラップ然としたものと、平野の低い声で吐き出すような、かなりセクシーなものと、2人のフロウや発声の対比がドラマティック。さらに、そのすぐあと、岸が伸びやかなボーカルで切り込んでくる展開も目まぐるしい。

“Is it me?”には、作詞と作編曲のすべてにK-POPやボーイズグループの仕事で活躍するKENTZが関わっているほか、Phoenix StormとSlack Rat(作詞作曲)、DJ Juke-L(作編曲)、BIG AIR(編曲)という多数の作家が参加している。