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木管アンサンブルの世界最先端を聴く――来日するレ・ヴァン・フランセの今

 これまで世界中で幾多の木管アンサブルがこれらの曲にトライしてきたのだろう? このアルバムに含まれるいくつかの〈バイブル〉的な作品は、アマチュアも含めると世界中で数多く演奏されてきた曲である。そのときのアンサンブルの音楽性のみならず、様々なベクトルの尺度を測ることができる試金石とも言える作品。そこで奏でられる音楽を厳密に比べることは必ずしも品が良いとは言えないが、ここまで示されてしまうと序列を思わず考えてしまうほどの出来映えだ。その妙技を、今年も日本で体験できるのは嬉しい。

LES VENTS FRANÇAIS 『Winds & Piano』 Warner Classics/ワーナー(2014)

 P.メイエが中心となって結成された管楽アンサブルであるレ・ヴァン・フランセは、曲により編成が変わる。だが、常に音楽的にも技術的にも世界最先端の実力を彼らが示すのは驚きだ。ソリストであり超一流のオケ・プレイヤーが集まった団体というのは、必ずしもアンサンブルとしての精度や実力が比例する訳ではないのも世の中の常である訳だが、ここではその慣わしは一切通用しない。サーカスと化した団体を聴く時ほど音楽がつまらなく感じられた事はないが、もちろん人数的に比べる事は単純にできないにせよ、その心配などは全く無用である。

レ・ヴァン・フランセによるルートヴィヒ・トゥイレ“ピアノと管楽器のための六重奏曲”演奏の模様

 例えば1998年に録音しているプーランクの六重奏曲の、今回の再録音を聴いてみて欲しい。メンバーはホルンがブラトコヴィチに代わっただけで他は同じメンバー。1枚目のフランス音楽の演奏は他の曲も含め、〈フランスのエスプリ~〉と毎度言っている方が恥ずかしくなる程のある意味超絶演奏だ。方向の整合性が取れていて、さらにこれだけの力量があると名曲といえども生まれ変わる。2枚目の名高い古典作品の新鮮さ、3枚目のロマン派作品の濃密な時間をも味わえるこれらのCDには、レ・ヴァン・フランセの真髄が詰まっていると言っていいだろう。比較的珍しい曲も含め、木管アンサンブルの枠を超えた、まさに人がうらやむほどの音楽家たちが達成したひとつの到達点をこのアルバムで体感できる。