コラム

YULIANNA AVDEEVA 『シューベルト:3つのピアノ曲;プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番ほか』

音楽の多彩、美しき脈動――秋の来日公演も要注目!

François Sechet

 

 自然な“鼓動”を感じる。――1985年モスクワ生まれの俊英ピアニスト、ユリアンナ・アヴデーエワの音楽がすっと胸に入ってくるのは、鮮烈なエネルギーを響かせながらもそれに酔いしれることなく表現の脈動として生かしきっているからだろう。

YULIANNA AVDEEVA シューベルト:3つのピアノ曲;プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番ほか MIRARE(2014)

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 たとえばシューベルト。アヴデーエワは新しいアルバム(初のソロ・アルバムだ!)の最初に置いた、作曲家が早すぎる晩年に達した素晴らしい境地──気品と抒情と情熱の澄み切った融合――を自在に語る傑作《3つのピアノ曲》D946から、作品の透明感にのびやかな呼吸と鼓動をナチュラルにこめてみせる。もとよりこれ見よがしな表現の似合う作品ではないけれど、語り口の随所に、視界をふと染めるように聴こえる絶妙な呼吸の“ため”も、流麗なフレージングと矛盾せずに寄り添って響く。それに続くのが20世紀の鬼才プロコフィエフだから驚くのだが‥‥《戦争ソナタ》3作の中でもとりわけ鋭い斬り込みをみせる第7番の強烈な冒頭楽章から、高水準に冴えたテクニックに生きるエネルギーが、優れたダンサーの身体表現をみるような驚きと共に響く。ロマンとウィットの絶妙な交差を味わう緩徐楽章から、豪速の7拍子に凄まじい昂奮を燃やし走り切る終楽章での見事な重量感と躍動感! アヴデーエワいわく、プロコフィエフ自身がピアニストとして各地で演奏するとき、自作のみならずシューベルトの編曲やショパンを弾いていたことから新アルバムの選曲を思いついたとか。従って続くのはショパン。アルバムが2枚組というヴォリュームにも意味があるわけだが――彼女がこれまで注目を集めてきたショパン、しかも表現の緻密と多彩を繰り広げる《前奏曲集》作品28を置いた選曲も巧みだ。彼女のショパン録音は、2010年に優勝したショパン・コンクールでのライヴ録音などをはじめ、ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラとのピアノ協奏曲集では、ショパン存命期のエラール製フォルテピアノを弾いて共演(昨年春の日本公演も賞賛を集めた)。ヒストリカル・ピアノでの演奏経験は、間違いなくアヴデーエワの音楽を広く深くしたことだろう。《前奏曲集》の精緻なためと優美な流れの合致から感じられる、自然で美しい鼓動は、描くように、歌うように、語るように‥‥繰り返し聴き込ませる力を持っている。

【参考動画】ユリアンナ・アヴデーエワの演奏によるシューベルト作曲“3つのピアノ曲”のパフォーマンス

 

 今秋の来日ツアーでもショパンにプロコフィエフを聴かせてくれるのは、まさに好機と言うほかはないけれど、ほかにモーツァルトリスト(これまた対照的な、しかし新譜で分かるように彼女ならいずれも“鼓動”の多彩を見事に聴かせてくれるだろう!)など、才気をじっくり味わうべきピアニストだと思う。

 

LIVE INFORMATION

ユリアンナ・アヴデーエワ 10・11月来日スケジュール

○10/23(木)24(金)フェスティバルホール
○10/26(日)松江市総合文化センター プラバホール
○10/30(木)秋篠音楽堂
○11/1(土)壬生町立壬生中央公民館
○11/2(日)所沢市民文化センター ミューズ
○11/3(月・祝)鎌倉芸術館 大ホール
○11/8(土)ミューザ川崎シンフォニーホール
○11/9(日)福島市音楽堂
○11/14(金)東京オペラシティ
○11/16(日)サンポートホール高松(高松市文化芸術ホール)

www.kajimotomusic.com/jp

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