5人組会社員バンド・(夜と)SAMPOが、2024年8月28日(水)にメジャー1stアルバム『モンスター』をリリースする。本作には、MBS/TBS系ドラマ「#居酒屋新幹線2」のオープニングテーマ“プラズマクラシックミュージック”や、バンド結成初期の楽曲“革命前夜”の再録版などが収録されている。
そんな(夜と)SAMPOの新作リリースを前に、5人がこれまでに生み出してきたインディーズ時代の楽曲にもフォーカスを当てたい――そんな想いから、バンドでソングライティングを担当する吉野エクスプロージョン(ギター)に、メジャーデビュー以前に発表してきた楽曲から思い入れのある曲を選んでもらった。
以下の選ばれた3曲を、吉野はどのような思いで書いたのか? 吉野によるライナーノーツとともに、(夜と)SAMPOの音楽の奥深い一面を覗いてみてほしい。 *Mikiki編集部
“BACK MY WORD”
(2021年作『ノストラダムス』収録)
我々の代表曲的な楽曲であり、ライブでもよく演奏される小気味の良い曲。メンバーの個性も良く出ていて、お気に入りの曲である。改めて曲の解説をしたこともなかったので、メジャー1stアルバムリリースのこのタイミングで書き連ねてみたいと思う。
極めて電子的でアバンギャルドな音色で構成された、ビビッド。そこには絶妙なスパイスで混ぜられた〈気持ち悪さ〉だったり〈不協和音〉、それによってもたらされる心地の良い違和感が散りばめられている。
まず何から作ったか?
冒頭のリフレインである。F#→Eのパワーコードで構成され、楽曲の7割をしめるこのギターリフから作った。ただし実はギターを弾いて作ったのではなく、シャワーを浴びながら脳内でギターを弾いて作ったのである。
当時世の中では現実には俄かに信じられないような疫病が流行った。COVID-19である。
自宅にセルフ監禁、いつになったら終焉を迎えられるのか、先の見えない日々。煮詰められたニンゲンたちは徐々に余裕を失い、他者に攻撃的になった。リアルな肉声でのコミュニケーションではなく、ネットの場で文字を介した思い思いの〈発散〉を始めた。おそらく、このタイミングで人の悪意に疲れ、さまざまな絶望を味わった人間も多かったであろう。SNSをひらけばそこには深淵があり、深淵もまたこちらを見つめていた。
大して汚れもしない身体を毎日洗うことに何の意味があるのか?という疑問はもちつつ、でもそんな世の中だったから、心まで新陳代謝するような感触があり、1日の生活における楽しみでもあった入浴の時間。
この時間、世の中のことを想う。ニンゲンというのは実に浅ましい。怒り、暗闇、欺瞞。そして、曖昧なだれかの意見によって左右される人々の言動と心。お前らに何の軸もないのか? ぐるぐる考えていると、あのギターリフが浮かんだのだ。右に、左に、揺れるように。
そこへ、信じられないくらいキショいメロディをつけてやろうと思った。シャワーの温度を1℃上げた。自分の温度も上げ、沸点を近づけるためだ。ギターのフレーズを口ずさんでみた。コレはもはや口ずさむようなメロディではない……いいぞ! 怒りで満ちている! 不協和音万歳!!
すぐに浴室を出てボイスメモに入れて、デモを作ったらできました。今歌詞を読み返すと、すっごい怒ってはりますね、この人。おーこわ。いい世の中になって良かったね。
でもこの時からずっと思ってる。みんな、自分のことばを取り戻すべきだ。自分がほんとうに思うことを口にするべきなんだ。教訓のように歌っています。