フランツ・フェルディナンドが待望のニューアルバム『The Human Fear』をリリースした。フランツらしさを受け継ぎながらテーマ的にも音楽的にも新たな挑戦をし、ポジティブなムードに満ちた快作は早くも高い評価を得ている。そんな新作のリリースを記念して、日本のアーティストたちに〈フランツ・フェルディナンドと私〉というテーマで思いを綴ってもらった。第3回に登場してもらうのは(夜と)SAMPOの吉野エクスプロージョン。 *Mikiki編集部
フランツ・フェルディナンドと私
by 吉野エクスプロージョン((夜と)SAMPO)
カーステレオからの逆輸入。
それは何か?
親が聴いていた音楽。それは血肉となり、自分の中に存在するのだが、名前は知らない音楽たち。学生時代、色気づいて音楽に目覚めた思春期のニンゲンが、高校の先輩や雑誌・ネットといった当時の情報源から得た〈どうやら有名らしいアーティスト〉の代表曲を聴いたときに〈あ!!! この曲、知ってる……てか歌える!! あの曲だ!!!〉と気づく。そう、あの現象。これをカーステレオからの逆輸入と呼んでいる。おそらく、そう呼ぶのは私だけだろう。
フランツ・フェルディナンド。彼らの音楽は、11歳の僕の中に、一度入った。ラジオ局のプッシュアップ曲だったこともあり、それに関連して幾つかの曲が、当時僕の鼓膜を震わせまくっていた。特に脊髄に染み渡ったのは、“Take Me Out”。独特のリズミカルなリフレインの中で叫ばれる言葉とメロディたち。否が応でも口ずさんで体も揺れる。それが音楽で〈ノる〉ということだと自覚することもない。静かな初体験であった。
時は流れる。高校生でバンドを始めた。軽音楽部にも入った。オシャレな先輩たちから様々な洋楽を教わった。どうやら僕はUKロックが好きらしい。恥ずかしげもなく、UKロッカーを自称し、そこまで深く意味も知らないのに、ターゲットマークのストラップでギターを抱える。レディオヘッドにハマり、ジョニー・グリーンウッドを模倣した前髪を流すマッシュヘアを1000円カットでオーダーする。高いのは買えないから、廉価でペラッペラのモッズコートに身を包む。だから、震える冬。UKロックコーナーをひとさらい。視聴に視聴を重ねる。高校生、なけなしの金でCDと触れ合う。電撃が流れる。あの瞬間をずっと忘れない。
だが何故か懐かしい衝撃。“Do You Want To”。そう、その時にカーステレオからの逆輸入が再び起こる。フランツ・フェルディナンド。そうか、あなたたちだったのね、と気づく。この曲を聴き終わり、カーステレオでは触れなかった、知らないアルバム曲を初めて聴く。なんで知らなかったんだ。アルバムで聴いとけよ、小学生の自分。説教をしたい。それほどにハマってしまったのが“This Boy”。1日で32回くらい聴いた。2分21秒。短い楽曲、リフレインを何度も繰り返すことの中毒性を知る。
冬から季節は夏へ。貧乏高校生には嬉しい出来事があった。ユニークなクロージングを販売する某カジュアルウェアチェーンとのコラボレーションTシャツだ。紺色がハゲるまで着まくったなぁ。最後は虫食いをしてしまったあの服のことを思い出しながら、今日改めてフランツの新曲を聴く。
やっぱ最高じゃん。この声なんだよ。わかってんじゃん、自分! 30になって高校生の自分のセンスを認められることの嬉しさ。音楽って最高。フランツって最高。またあのTシャツ、売ってくんないかなぁ。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年1月8日(水) ※日本先行発売
■CD・Tシャツ付きセット
品番:BRC769T
価格:7,700円(税込)
■LP・Tシャツ付きセット
品番:WIGLP495XBRT
価格:10,390円(税込)
■国内盤CD
品番:BRC769
価格:2,860円(税込)
■輸入盤CD
品番:WIGCD495
価格:2,690円(税込)
■タワーレコード限定 直筆サイン入りアートカード付きCD
品番:BRC769TR
価格:2,860円(税込)
■通常盤LP
品番:WIGLP495
価格:4,890円(税込)
■限定盤LP(ホワイトヴァイナル)
品番:WIGLP495X
価格:5,290円(税込)
■タワーレコード渋谷店限定 カセットテープ
品番:WIGMC495
価格:2,690円(税込)
TRACKLIST
1. Audacious
2. Everydaydreamer
3. The Doctor
4. Hooked
5. Build It Up
6. Night Or Day
7. Tell Me I Should Stay
8. Cats
9. Black Eyelashes
10. Bar Lonely
11. The Birds
12. It’s Funny *Bonus track
PROFILE: FRANZ FERDINAND
2003年5月にドミノと契約し、1stシングル“Darts Of Pleasure”をリリース。2ndシングル“Take Me Out”は世界中で爆発的な成功を収め、フランツ・フェルディナンドの名を世界に轟かせた。その名を冠したデビューアルバム『Franz Ferdinand』は全世界で500万枚以上のセールスを記録。アーティストとして常に前進を続け、『You Could Have It So Much Better』(2005年)、『Tonight: Franz Ferdinand』(2009年)、『Right Thoughts, Right Words, Right Action』(2013年)、『Always Ascending』(2018年)といったアルバム作品を世に送り出し、フランツ独自のサウンドスタイルを築き上げると同時に、ダン・キャリー、ホット・チップのジョー・ゴダードやアレクシス・テイラー、トッド・テリエ、フィリップ・ゼダールら最も先駆的なプロデューサーたちと仕事をしている。彼らの音楽は世界的に反響を呼び続け、約20年の間に商業的にも評価的にも世界最大のUKバンドの一つとなった。アルバムセールスは1,000万枚を超え、現在までにストリーミング回数は25億回、14枚のプラチナアルバムをリリースしており、ブリット・アワード、アイヴァー・ノヴェロ、マーキュリー・プライズ、さらにはグラミー賞にもノミネートを果たしている。レディング&リーズ、ロック・アン・セーヌ、プリマヴェーラ、オール・ポイント・イーストといったフェスティバルでのヘッドライナーを含む煽情的なライブショーのチケットは世界中で600万枚を売り上げを記録。2022年にリリースされたグレイテストヒッツ作品『Hits To The Head』は、彼らの楽曲の多くがいかに普遍的で愛されてきたかを思い起こさせるものであり、イギリスではロンドンのアレクサンドラ・パレスを完売させるなどUK音楽史上最も重要なバンドとしての地位を確立している。