(夜と)SAMPOが、メジャー1stアルバム『モンスター』のリリース記念ツアーを大阪と東京で開催した。ここでは、peanut buttersとインナージャーニーをゲストに招いて行われた東京・渋谷Spotify O-nest公演の様子をレポートする。
peanut butters、インナージャーニーがフロアのボルテージを上げる
この日トップバッターとして登場したのは、peanut butters。ライブはポップな楽曲“グッドモーニングおにぎり”でスタートした。待ってました!と言わんばかりに、観客たちもオープニングナンバーから身体を揺らす姿が窺えた。その後も人気曲“ツナマヨネーズ”や最新シングル“あいへいと”など、軽快なノリの楽曲を立て続けに披露。(夜と)SAMPOのアルバムリリースを祝福する言葉や、こうしてライブに呼んでくれたことに感謝を述べたpeanut buttersは、持ち時間いっぱいに楽曲を届け、十分に会場を温めてステージを後にした。
2番手を務めたのはインナージャーニーだ。イントロのクラップで気分が高揚する“クリームソーダ”やしっとりとしたバラードナンバーの“エンドロール”、そして最新曲“きらめき”を含んだ緩急あるセットリストを展開。MCでは、今日が(夜と)SAMPOと3年ぶりの対バンであることや、バンド間でのメンバー同士の会話についても語られ、親交のある様子が窺えた。自分たちの多様な音楽性でリスナーたちを魅了したインナージャーニーは、フロアのボルテージをさらに上げ、この日の主役=(夜と)SAMPOへとバトンを渡した。
ただ自由に音楽を楽しむ(夜と)SAMPOとオーディエンスたち
そして、満を持して(夜と)SAMPOが登場した。この日を心待ちにしていたであろうオーディエンスから拍手で迎えられた5人がはじめに演奏したのは、メジャー1stアルバムの表題曲“モンスター”。〈六畳間 星のない宇宙で〉という歌い出しをまっすぐな歌声で会場に響かせ、リスナーを自分たちの世界に一気に引き込む。一瞬にしてなかのいくみ(ボーカル)に目が釘付けになった。
彼女のボリュームたっぷりな青いチュールの衣装もインパクト大だが、さらに印象的なのがそのパフォーマンスだ。身体を大きく左右に動かしながら全身で表現する姿からは、視覚からもリスナーを楽しませようという心意気が伝わってくる。あるいはライブの楽しさや喜びのあまり、自然と身体が動いてしまっているようにも感じた。
ライブの前半戦は「今日は楽しんでいきましょう!」という掛け声のもと、“BACK MY WORD”や“プラズマクラシックミュージック”を投下。芯のある歌声とメロディックなギター、楽曲を彩るエレクトロなキーボード、全体をまとめ支えるベース&ドラムのサウンド、そしてパワフルなエネルギーをしっかりと届けていく。
MCでは、吉野エクスプロージョン(ギター)が改めて『モンスター』のリリース告知をすると共に、「今日は世の中を生きていて感じる喜びも絶望もすべて表現していきたいと思いますので、よろしくお願いします」と力強く話した。そして次に披露されたのは、サイケデリックなリフと細かく刻まれるバスドラが鮮明な印象を残す“moonlight”。フロア上には、まるで月のようにミラーボールが輝いていた。
ライブ中盤にはミドルテンポの“YES”を届ける。聴き手を肯定する歌詞とゆったりとしたグッドビートに、観客たちも心地よくリズムに乗る。また、“春”ではメンバーが着席し、アコースティックスタイルでプレイする。タイトル通り、春の季節を彷彿とさせる温かみのある歌声とサウンドで、会場を優しく包み込んでみせた。
その後は再びバンドセットに戻り、さらにギアを上げていく。“シャドウ”や“idea”を奏でている間、フロアにそっと目を向けてみると、感じるままにリズムに乗る人もいれば、鳴らされる音や歌声にじっと聴き入る人も見られた。そんな自由に音楽を楽しむオーディエンスたちのスタイルは、会社員でありながらも音楽を好きなように楽しむ、(夜と)SAMPOのメンバーたちの姿がそのまま反映されているようだった。誰もがそれぞれの事情を抱えながらも、音楽を通じてひとつになっていく、そんな瞬間に立ち会えた気がした。