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平均年齢65歳のイエスによる現役感たっぷりの名ステージ

約20分の休憩後、第2部は“South Side Of The Sky”で幕を開けたが、なんとあの『Fragile』(邦題『こわれもの』)と同じ靴音のSEから始まったのにはビックリ。この曲は難易度が高く、中盤のピアノソロや後半におけるギターとシンセの掛け合いなどキーボードの見せ場が多いのだが、ジェフが奮起してスティーヴとの激闘を見せてくれた。スティーヴが赤いストラトに持ち替えた“Cut From The Stars”は、この5人のメンバーでレコーディングした最新曲ということもあり、抜群にシャープでドライヴするグルーヴィなサウンドは、今日一番の出来映えだった。

ジェフ・ダウンズ

第2部の最後で今晩のハイライトは、イエス史上最強の超大作『Tales From Topographic Oceans』(合計80分)を20分強の長さにアレンジしたダイジェストメドレーだ。このアルバムがリリースされた当時でさえ全曲を演奏する機会は決して多くはなかったのに、スティーヴはこのアルバムの全体像をなんとかライブで披露したいと考え、壮大なダイジェスト構想に至ったという。

スティーヴによれば〈クラシック音楽のように演奏者を変えることはできても、聴衆のイエスに対するイメージを変えることはできない〉ということで、オリジナルアレンジからの編集作業にはかなり苦労したようだ。だが実際に作業を始めてみると、単なる時短のためにハサミを入れる編集とは異なり、組曲に新しい視点を与え、誰も想像したことがなかった〈新しい組曲〉として成立させることに成功している。なんと我々リスナーは、あの大交響曲のエッセンスを一気にライブ体験することができてしまったわけだ。言葉で表現するのは難しいが、このメドレーの素晴らしさは実際に会場で爆音体験してもらうのが一番わかりやすいだろう。

アンコールは定番中の定番である“Roundabout”と“Starship Trooper”が演奏された。プログレだから大合唱というわけにはいかないが、誰もが小声で“Roundabout”を一緒に歌っていたのは実に微笑ましい光景だったし、終演後に皆が口を揃えて〈楽しかった!〉と言っているのを聞いてホッコリ。休憩を除いてきっかり2時間のパフォーマンスは、選曲、演奏、満足度ともに過去最高レベルに達してきている。超絶テクニックにあふれるコテコテのサウンドを体験するのもプログレの醍醐味だと思うが、印象派の絵画のように芸術的で繊細なイエス・ミュージックを生で味わうのも、極上で贅沢な時間となるに違いない。

ジェイ・シェレン

なんと言ってもスティーヴ・ハウの奮闘ぶりにはいつも驚かされる。77歳という年齢をまったく感じさせない壮絶ギタープレイを披露してくれただけでなく、曲の進行ポイントやカウント出し、照明の指示に至るまで、もうなんでもかんでも一人で背負ってる感じがヒシヒシと伝わってくる。現在のイエスは平均年齢が65歳であり、若いロックバンドと比較することはできないものの、複雑な構成や変拍子をものともせず、いまも現役感たっぷりの演奏でもり立てているのはさすがだし、必ずしも年齢の高さがパフォーマンスに直接影響を与えるわけではないということが証明された、感動的な初日公演だった。

イエスのジャパンツアーは始まったばかりで、この後、東京公演2日間と仙台、名古屋、大阪へと続いていく。音楽界のスターシップ・トゥルーパーたちが奏でる、極上のライブパフォーマンスを見逃すことなかれ!

 


SETLIST
第1部
オープニング:青少年のための管弦楽入門(Young Person’s Guide To The Orchestra)
1. Machine Messiah/『Drama』(邦題『ドラマ』)
2. I’ve Seen All Good People/『The Yes Album』(邦題『サード・アルバム』)
3. Going For The One/『Going For The One』(邦題『究極』)
4. America -Southern Solo-/『Yesterdays』(邦題『イエスタデイズ』)
5. Time And A Word/『Time And A Word』(邦題『時間と言葉』)
6. Turn Of The Century/『Going For The One』
7. Siberian Khatru/『Close To The Edge』(邦題『危機』)

第2部
8. South Side Of The Sky/『Fragile』(邦題『こわれもの』)
9. Cut From The Stars/『Mirror To The Sky』
10. Tales From Topographic Oceans Medley/『Tales From Topographic Oceans』

ENCORE
11. Roundabout/『Fragile』
12. Starship Trooper/『The Yes Album』

 


LIVE INFORMATION
YES:The CLASSIC TALES OF YES Tour 2024

2024年9月18日(水)東京・昭和女子大学人見記念講堂
開場/開演:18:00/19:00

2024年9月19日(木)東京・昭和女子大学人見記念講堂
開場/開演:18:00/19:00

2024年9月21日(土)宮城・仙台GIGS
開場/開演:16:00/17:00

2024年9月23日(月・休)愛知・岡谷鋼機名古屋公会堂(名古屋市公会堂)
開場/開演:16:00/17:00

2024年9月25日(水)大阪・NHK大阪ホール ※SOLD OUT
開場/開演:18:00/19:00

企画・制作・招聘:Live Nation Japan合同会社
協力:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/ワーナーミュージック・ジャパン

公演ページ:https://www.livenation.co.jp/yes-2024

 


PROFILE: YES

Photo by Gottlieb Bro

1968年、ロンドンでクリス・スクワイア(ベース)、ジョン・アンダーソン(ボーカル)を中心に結成されたプロレッッシブロックバンド。1970年代のプログレッシブロックブームを牽引、数々の名盤を生み出し、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー、ジェネシスと共に5大プログレバンドと呼ばれ、ロック史に大きな影響を与えたバンドのひとつである。代表作はアルバム『こわれもの』(1971年)、『危機』(1972年)、『ロンリー・ハート』(1983年、原題『Owner Of A Lonely Heart』)など。1985年にグラミー賞を初受賞。2017年にはロックの殿堂入りを果たしている。2015年6月27日にオリジナルメンバーだったクリス・スクワイアが急性骨髄性白血病により急逝。彼の意志を尊重し、バンドは継続となる。2021年10月に7年ぶりとなるスタジオアルバム『The Quest』をリリース。UKチャートで20位の大ヒットとなり、健在ぶりを示した。このアルバムのリリースから7ヶ月後の2022年5月26日にドラマーのアラン・ホワイトが死去。2016年よりサポートメンバーとして参加していたジェイ・シェレンが2023年のアルバム『Mirror To The Sky』から正式メンバーとなる。離合集散を繰り返しながら、他の巨大バンドと比べてもほとんど活動休止期間を持たずに今も現役で活動を続けている。