イエスの2年ぶりとなる来日ツアーがスタートした。デビュー55周年記念も兼ねた今回のツアーは、開催決定のアナウンス時点で日本初演奏となる楽曲のパフォーマンスが予定されていることも、大きな話題となった。

そんなセットリストにも期待がかかるジャパンツアーより、9月16日に行われた東京公演初日の模様を綴った公式ライブレポートが到着した。 *Mikiki編集部


 

日本初披露ナンバー、音源を完全再現した楽曲までが並んだ第1部

「『危機』の曲は以前から何度も演奏しているから、今回は新鮮で斬新なアプローチが必要だった。だから、控えめに言ってとてもエキサイティングだし、大きなチャレンジでもある。イエスにチャレンジ精神がなくなってしまったら、その時はバンドの終わりを意味するんだ」(スティーヴ・ハウ)

プログレッシブロックの代名詞と呼べる最高のバンド、イエスが2年ぶり12度目の来日を果たし、9月16日の東京公演からジャパンツアーが始まった。今回は東京3日、仙台1日、名古屋1日、大阪1日の合計6公演が行われ、約10日間かけて日本を縦断する。イエスが仙台でコンサートを行うのは1994年の〈Talk Tour〉以来で、なんと30年ぶりだそう。

来日メンバーは2022年に行われた前回公演と同じで、スティーヴ・ハウ(ギター/ボーカル)、ジェフ・ダウンズ(キーボード/ボーカル)、ビリー・シャーウッド(ベース/ボーカル)、ジョン・デイヴィソン(ボーカル)、ジェイ・シェレン(ドラムス)の5人。スティーヴは70年代黄金期からのメンバーで、ジェフは80年代、ビリーは90年代からイエスと深く関わってきている。ジョンはイエスに加入してから早12年が経過して完全にボイス・オブ・イエスとして定着したし、ジェイも8年前からイエスをサポートしてきて、2023年2月に亡きアラン・ホワイトの後釜として三代目ドラマーに就任している。

スティーヴ・ハウ

今回は〈The CLASSIC TALES OF YES Tour 2024 デビュー55周年記念公演〉と銘打っており、1969年のレコードデビューから55周年を記念した公演という位置づけになるうえ、1973年のリリースから50周年を迎えた『Tales From Topographic Oceans』(邦題『海洋地形学の物語』)をフィーチャーした昨年のアメリカツアーからの流れを継承し、さらに最新作『Mirror To The Sky』までを俯瞰した、聴きどころ満載の選曲となっている。公演ごとにテーマを決め、それに沿った選曲で毎回楽しませてくれるイエスだが、今回は〈決してノスタルジックなアンソロジーショーにはしたくない〉というスティーヴの想いを汲んだ、新旧ファンが歓喜するようなセットリストを用意してくれた。

ビリー・シャーウッド

東京公演は、イエスとして初めて昭和女子大学の人見記念講堂での開催となった。まず注目したいのが、5人の出で立ちの変貌ぶりだ。2年前と比べ、彼らの雄姿は一段とスケールアップしていて、ステージ上の佇まいも堂々としているのがわかる。それはまさしく〈団結〉と〈自信〉の現れなのだろう。それを早々に証明したのが1曲目の“Machine Messiah”だった。いきなり10分強の曲を、ほぼレコードと同じスピードで一糸乱れず演奏し、この曲のオリジナルパフォーマーであるスティーヴとジェフの掛け合いもお見事。

ジョン・デイヴィソン

続く定番曲“I’ve Seen All Good People”では、ジョンとビリーとスティーヴによる流れるようなコーラスハーモニーが美しくて早くも夢心地となる。3曲目は遂に日本初演となる“Going For The One”が登場。スティーヴによるスティールギターの絶妙なボトル捌きが映える曲で、そのダイナミックなロックンロールが体を揺らす(スティーヴはスティールギターを左右に移動させながらソロを弾くという妙技も披露!?)。

“America”は中盤から後半にかけての〈Southern Solo〉と呼ばれるインストパートが演奏され、ここでもスティーヴのギターソロに注目が集まる。彼はソロを弾きながら歩き回ったり片足を上げたりと、とにかく元気一杯で、ひところ心配されていたリズムの遅れも皆無になった。続く“Time And A Word”と“Turn Of The Century”はフル演奏。こうしたバラード曲におけるジョンのボーカルの伸びやかな高音の美しさは、まるで天使のようだ。また“Turn Of The Century”におけるスティーヴのアコースティックギターの静謐な響きを始め、彼の得意技である曲中でのギターの持ち替えやジェフの優雅なピアノソロ、ジェイのマレット演奏など、この曲のオリジナルのイメージを損なうことなく、大切に演奏されたのがなによりも嬉しかった。

第1部の最後は“Siberian Khatru”が演奏された。当初予定されたセットリストには入っていなかったものの、サウンドチェック中に急遽変更されたらしい。今回の公演は前回公演とは選曲が重複しない(アンコールを除く)はずだったので、これは嬉しいサプライズ。変拍子やキメの多い曲だが、もちろん完璧な再現演奏で、大歓声のもと第1部は締めくくられた。