サザンオールスターズが、約半年間にわたる全国ツアー〈サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」〉を無事完走した。10年ぶり、通算16枚目のオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』のリリースを挟みながら開催された同ツアーは、全公演のチケットが完売。今年でデビューから47年を迎えるモンスターバンドは、その音楽とパフォーマンスで日本各地を熱狂させた。
茅ヶ崎ライブ、最後の夏フェス出演となった〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL〉でのステージを経て行われた6年ぶりの全国ツアーについて、ライター/編集者の内田正樹に総括してもらった。 *Mikiki編集部
細部まで徹底的に〈仕上げてきた〉ツアーファイナル
ライブ1曲目。テレキャスターを抱えた桑田佳祐を中心に“逢いたさ見たさ 病める My Mind”を奏でるサザンの姿を観ていたら、極めて私的な感想だが、ふと、もしもビートルズがまだ全員存命で、まかり間違って揃ってライブの一つでもやってくれていたら、ひょっとすると、こんな空気感の演奏が聴けたりもしたのかな?と思った。無論、バンドの成り立ちもヒストリーもキャラクターも編成も楽曲も全く違うのは百も承知だが、曲のリズムから後期ビートルズを感じたのか、あまりにリラックスしたムードで鳴らされていた理想的なバンドサウンドがそう思わせたのか、ともかくそんな思いが頭を過った。
5月29日、東京ドームで開催された〈サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」〉を観た。当日の詳細なレポートは既にさまざまなメディアで公開済みかと思うので、本稿では演奏楽曲に触れつつ、僭越ながら筆者なりの印象や視点などを交えたテキストを綴ってみたいと思う。
この日のライブは今年1月の石川を皮切りにアリーナ8会場・ドーム5会場の計13カ所26公演で総動員数のべ60万人(加えて全国の劇場にて約15万人がライブビューイングで観覧)という壮大な全国ツアーの大千秋楽だった。この日、筆者は初日の金沢を観て以来の参加だった。初日と千秋楽、アリーナとドームにはそれぞれの面白さがあるのだが、そこを差し引いても、ライブ序盤から、セットリストの構成、演奏、曲間のインターバルなど、公演を重ねたことで細部まで徹底的なまでに〈仕上げてきた〉と感じた。桑田の喉はすこぶる調子が良さそうで、原 由子、関口和之、松田 弘、野沢秀行のプレイもアレンジの最も気持ちのいいポイントでビシッと決まり、斎藤 誠、片山敦夫らサポートメンバーの的確なアンサンブルも楽曲をもり立てる。
ちなみに筆者は昨年9月に“ジャンヌ・ダルクによろしく”についての短評をMikikiに寄稿しているが、セットリストの2曲目を担ったこの曲は、やはり大会場であればあるほどよく映えた。サポートギタリストの斎藤 誠が弾き出す低音弦のヘヴィかつキャッチーな王道ロック風のリフが鳴り響くと同時に、燦然と輝く太字の電飾でステージ背面いっぱいに〈SOUTHERN ALL STARS〉の文字が映し出されたときの、あの快感といったら! 本当に鳥肌モノだった。

続いて、“せつない胸に風が吹いてた”、“愛する女性(ひと)とのすれ違い”、“海”、“ラチエン通りのシスター”、“神の島遥か国”などファンにお馴染みの人気曲をリラックスしたムードで奏でると、より肉体性をディープにアップデートした“愛の言霊(ことだま)〜Spiritual Message〜”で序盤を締めた。