デビュー10周年イヤーを経て、新たなステージへと踏み出した大原櫻子。本日6月11日にリリースされた約2年半ぶりのオリジナルフルアルバム『Traveling』には、彼女自身の今を映し出した全12曲が収録されている。

〈旅〉〈挑戦〉〈再発見〉とさまざまな思いを詰め込んだ本作は、聴き手にとってもこれまでとは違う、彼女の新しい一面に出会える作品となっている。デビュー11年目に突入した大原は、どんな思いでアルバムと向き合ったのか。制作の裏側から一曲一曲に込めた感情までじっくり語ってもらった。

大原櫻子 『Traveling』 ビクター(2025)

 

デビュー10周年を経て〈次はどうする?〉

――今回のアルバム『Traveling』のタイトルには〈旅〉や〈冒険〉という意味が込められていますが、大原さんにとってはどんな1枚になりましたか?

「〈チャレンジ〉が裏テーマにあるアルバムです。選曲の段階から、これまでの私にはなかったようなメロディやアレンジ、大人っぽい歌詞などが多くて。11年目を迎えた今、新しい扉を開けたような感覚があります。見たことのないところへ連れて行ってくれる曲が揃って、聴く人にも〈音楽の旅〉を感じてもらえると思います」

――アルバム制作がスタートした段階からテーマは決まっていたのでしょうか?

「デビュー10周年は特別な年にしたかったのでいろいろ考えていたんですけど、その延長線上で〈次はどうする?〉という思いはありました。スタッフの方とも話し合いながら〈あえて新しい壁を作って、それを超えていきたいね〉って。そこからいろんな作家さんとタッグを組んで、これまで歌ってこなかったような曲に挑戦しました」

――着々とキャリアを積み上げてきた今、改めて新しい作風に挑む際の心境はいかがでしたか?

「どんなアルバムに仕上がるか未知だったので、ちょっと不安はありました。今まで聴いたことのない音楽に出会える楽しさがある一方で、仮歌を聴いては〈これ、私の声や雰囲気に合うかな?〉と思うこともあって。

洋服って見た目は可愛いと思っても、実際に着てみるとしっくりこないことがあるじゃないですか。逆に、見た瞬間はハマらなかったけど着てみたらめちゃくちゃ似合って可愛くなれることもある。それと同じで、実際に声を乗せてみると〈意外とフィットする!〉と思える曲が多かったです」

――その中でも〈意外と自分にハマったな〉と感じた曲はどれでしょう?

「“Deep Blue”ですね。最初は自分に合うのか不安だったんですけど、実際に歌ってみたらピッタリで。歌詞と今の自分の年齢や声のトーンが重なる感覚があって、すごく手応えを感じた曲です」

――アルバムにはバリエーション豊かな楽曲が揃っていますが、個人的には2曲目の“Speechless Love”がすごくインパクトがありました。一瞬〈誰の曲だろう?〉と思ってしまうくらい、今までとは違う一面を見ることができました。

「そうですよね(笑)。私も最初に聴いたとき〈これは何だ!? 変化球来た〜!〉って興奮するくらい衝撃的でした。仮歌を聴いても、自分が歌ったときのイメージがまったく見えなくて。戸惑いながらも、同時にすごく心を掴まれたのが印象的でした。食べたことのない料理を口にして〈美味しい! もう一口食べて確かめたい〉と思うような。そんなクセになる不思議な魅力があるんです。

でも、やっぱり〈本当に私に合ってるのかな?〉という不安がずっとあって。そうしたらスタッフさんが〈これは絶対いい曲になるから〉と背中を押してくれたんです。その言葉を信じて歌い続けたら、だんだんクセになっていく感覚も生まれて。何度も歌って自分の声が曲に馴染んでいくというより、むしろ曲の方に私が引っ張られていくような感覚でした。

最初に耳にしたときは不思議に思いながら、気づいたらまた聴いてるような中毒性のある曲だと思うんです。『Traveling』というアルバムタイトルにも通じる、異国に足を踏み入れたような旅の面白さを感じてもらえる一曲になったと思います」

――まさに、最初に聴き終わったあと〈もう一回聴きたい〉と思ってリピートしちゃいました。

「J-POP以外の要素も入っている曲ですよね。作詞作曲を手がけてくださったさかいゆうさんは海外でも歌っていらっしゃるので、世界中のいろいろなメロディが入っているように感じます」