
音源と対照的にライブは演奏力で魅せる強み
──先行トラックの“jabber”はボサノバとUKガラージとマイアミベースが混ざったようなトラックですが、元々どんなイメージがあったんでしょう?
takachi「今年の1月頃に、アルバムに入っている“456”のAメロのビートみたいな方向性で曲を作ろうと思ったのですが、その後アルバムを作るにあたって、ビートを一新しようと思ってスネアの音色をちょっとマイアミベースっぽい感じに変えて、コード進行も不思議な感じに変更しました。
僕はアコギが全然弾けないんですが、弦を1本ずつ弾いてみて、それをMacBookのマイクで録音してまずデモを作ってみたんです。ただ、そのデモの打ち込みのギターの音色だとメンバーに良さが伝わらなくて、その段階でボツになったらもったいないなと思って、後日Kenichiにアコギを弾いてもらってデモを作り直しました」
Kenichi「最初のデモを聴いた時は良い意味でドン引きしました(笑)。途中、フラット9thっていうコードが入ってくるんですが、〈このテンションコード、感覚で入れたのか……〉って思いました。
でも、ギタリストの僕がこういう展開を提案したかったっていう気持ちもありましたね。“jabber”によって新しいインプットができたので、今後また別の曲で新しい提案をしたいと思っています」
――後半の印象的なギターソロはデモの段階からあったんですか?
Kenichi「プリプロの段階で〈ギターソロはギターっぽい音に寄せ過ぎずに、飛び道具的な要素にした方が面白いんじゃないか〉ってtakachiと話して、その場で入れていきました」
takachi「Kenichiは自分が割と大胆なことを言っても、ちゃんと対応してくれるんですよね」
Kenichi「muqueを始めた時から2人で会話しながら曲を作ることが多かったので、具体的に話さなくとも〈こういうことなんだろうな〉ってわかるようになりました。日々吸収するものがあって、〈どんどん引き出しを増やさないと〉と刺激を受けています」
Lenon「“jabber”も僕はベースを弾いてないんですよね。お洒落な曲なので、生のベースが入ったらアコースティックな雰囲気が出て合うかなと思ったんですが、結局〈打ち込みが良い〉という結論になって。そこからはライブでどう表現しようかっていうことで頭がいっぱいになりました。一回ライブでやったのですが、いろいろと試した上で音源に忠実に弾きましたね」
──自分が楽器を弾かなくても曲として良いものになった方がいいという考え方をしているのでしょうか?
Lenon「そうですね。ベーシストとして弾きたいという欲はあるんですが、やっぱりバンドなので僕がベースを弾くことで曲の方向性が良くない方向に変わってしまうのは違うと思っていて。自分が弾かない曲があるからといって、特に気にしてはいないですね」
takachi「実は自分もこのアルバムで1曲もドラムを叩いてないんですよね(笑)。
音源は歌を際立たせて雰囲気をしっかりと聴かせる一方で、ライブでは〈俺ら、これだけ演奏できるんだぜ〉っていうことを見せられればいいなと思っています。海外には多いけど日本にそういうバンドってあまりいない気がしているので、そこを目指しています」

最先端ポップからラウドロックまで多彩な音楽ルーツ
──では、それぞれ今シンパシーを感じるバンドやアーティストというと誰なんでしょう?
takachi「ビリー・アイリッシュ……はバンドじゃないか(笑)。最近聴いてるのはコイン(COIN)やレイニー(LANY)。あとドミニク・ファイクも大好きです。ドミニク・ファイクはアルバムごとにガラッと方向性が変わるので、新曲を聴くたびに〈すげー!〉って思ってます」
Lenon「自分は最近フライ・バイ・ミッドナイト(Fly By Midnight)という2人組をよく聴いています。トラックは打ち込みがメインで、歌のニュアンスやサウンドの表情が曲によってかなり違うところがmuqueに通じるなと思ってハマっています」
Asakura「私は高校の頃から好きだったトロイ・シヴァン(Troye Sivan)さんの曲を今でもよく聴いています」
Kenichi「僕はmuqueの音楽とは一番かけ離れたルーツを持っていて、元々ハードロックやラウド、メタル系の音楽がすごく好きで、今でもメインで聴いてるのはそういう音楽なんですよね。
でも、muqueをやる上でtakachiが聴いてるような音楽をしっかり聴き込んで、自分の中で咀嚼しているつもりです。Asakuraも今挙げてましたけど、最近はトロイ・シヴァンさんが好きですね。自分のルーツとは180度違う音楽が良い刺激になっていて、日々〈こういう音楽があるんだ〉って新鮮さを感じています」
takachi「僕のルーツにもラウドロックがあるので、そういう面でもKenichiとは通じ合うんですよね。
メタル/ハードロックギタリストのKenichiがいることで、綺麗なトラックにところどころラウドロックっぽさが入るのがmuqueの魅力のひとつにもなっていて。音源にはちょっとラウドなギターが入ってるけど、ライブだともっとラフに弾いてくれたりしてるんです。そこはmuqueを掘り下げれば掘り下げる程、興味を持ってもらえる部分なんじゃないなと思っています」
Kenichi「僕とtakachiはmuqueで活動する前に一緒にラウドロック寄りのバンドをやってたんですよね。それもあって自分のことをすごくわかってくれているので、コミュニケーションが取りやすいんです」
Asakura「私はラウド系はあまり聴かないんですが、ブリング・ミー・ザ・ホライズンは好きです。ちなみに初めて行ったライブはSiMでした」
Kenichi「俺も通ってるよ!」
Asakura「Kenichiはたまに自分の趣味の方向に行き過ぎるので、そういう時は〈帰ってきてもらっていいですか〉って言ってます(笑)。
アルバムの最後に入ってる“DAYS”という曲の2Aに入ってくるギターはKenichiが珍しく自宅録音をしてtakachiに送ったものなんですが、私がすごく好きなギタープレイです」
Kenichi「あのギターはどうやって思いついたのか覚えてないんですよね(笑)。自分がインプットしてきたことが自然と出せたのかなと思います」
Asakura「takachiから新しい音楽を吸収したことで手癖も含めてアウトプットが増えてるのかもしれない」
Kenichi「確かに手癖は混じってると思うから、それも含めてできた新しいアプローチっていう感じがする」
takachi「ライブでのギターソロは特に〈Kenichi!〉って感じだよね(笑)」
Kenichi「ライブでは、例えば“nevermind”は尺を伸ばしてそれぞれのソロパートを入れてるんです。メンバーそれぞれmuqueの前にライブバンドでの活動経験があるので、そのソウルはmuqueにも絶対に残したくて。ライブでそこの部分は包み隠さず出していきたいですね」