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(左から)黒沢綾、maiko

バイオリンで奏でる感傷と回想

――“Rotating Sphere”は藤本さんとのデュオです。

「2つのフレーズが、対等な関係で流れていくような感じを想像しながら作りました。まるで球体がぐるぐる回転するように……。

レコーディングにあたっては、もっと大人数での演奏も考えたのですが、結局デュオに落ち着きました。藤本さんが後からギターをいろいろ重ねてくれて、とても立体感のある仕上がりになりました」

――続くタイトル曲の“Reminiscence”はメランコリックかつ透明感あふれる曲です。5年前、つまり上京して20年の年に作ったそうですね。

「やはり節目の年にはいろいろな想いが駆け巡りますよね。上京してきた頃は、後にこのようなアルバムが作れるようになるなんて、思ってもいませんでしたから。

作った当時はまだコロナ禍の前でしたが、〈もう20年か……〉という感傷に加え、幼少の頃の思い出も頭に思い浮かぶような曲想にしました。それ以来、ライブでも演奏しているレパートリーですが、今回のアルバムのテーマは〈回想〉なので、改めてレコーディングしました。

7曲目の“遠い記憶”は、ライブでは〈どこか暗い〉という印象を持たれるお客様も多いんです。コロナ禍を経て、皆さんの音楽に対する感じ方が変わってきたのかな、という気もします」

 

遠くのものや人、故郷に馳せる思い

――私的にはちょっぴりブルージーな“Far away”がジワリときます。

「この感じは、私の曲の中でも異色というか、あまりないタイプの曲ですね。先ほど、〈共演者の皆さんからいろいろなことを吸収して~〉みたいなお話をしましたけれど、まさにアルバムのレコーディングメンバーをはじめ、ライブで共演したミュージシャンたちからインスパイアされたものが大きく影響してできた曲だと思います。

そんなエッセンスもありつつ、タイトルから察せられるとおり、アルバムのテーマである〈思いを馳せる〉ことをイメージしています。遠くにあるものや遠くに行ってしまった人を思う、うまく言い表せないのですが、寂しい気持ちとはまた違う感情を表現しました」

――アルバムを締めくくる“kiteki”は、シンプルながらも懐かしい物語を連想するような、温かいメロディが印象的です。

「〈kiteki〉(汽笛)というのは、私の地元である神戸を象徴する音のひとつです。ソロライブの冒頭ではいつも即興を弾いて、お客様に音楽の世界に入っていただくようにしているのですが、その即興演奏の中で出てきたモチーフを発展させました。最初はタイトルもついていなかったのですが、神戸でのライブでこのモチーフを弾いたときに〈あ、これって汽笛だったんだ!〉と改めて気づきました。

そんな自分の原点を表現するようなモチーフなのですが、実はこの曲、最初はアルバムの1曲目にしようと思っていたんです。そう考えながら、レコーディングでは最後まで取っておいたのですが、いざ録ろうとしたら、疲れもあったのかガチガチになってしまい……結局1テイクしか録れず、アルバムからは外そうかどうかとも思ったのですが、うまくミックスしていただけたこともあり、これだったら使えるな、となりました。そんな経緯もあり、これでレコーディングをいい感じに締めることができたので、この曲も最後に収録することにしました。

アイリッシュ音楽などにも通じる、重音などバイオリンならではの奏法も駆使しましたが、これはやはりソロライブを重ねてきた成果のひとつだと思います」