偉大なるピアニスト/作曲家の功績を称え、名盤10作品をUHQ-CDでリリース!
これほどジャンル、印象、編成を大胆に変質させながら、概してイメージを定着させられたアーティストも他にあるまい。カーラ・ブレイ。この名前とともにユニークな個性を放った各時代のオリジナル音楽に、しかしどれだけの人が並走し得ただろうか。教会のオルガン奏者だった父親に基礎を学び、バイト先のクラブで生音を聴いてジャズの何たるかを習得。そんなところで知り合うポール・ブレイのために曲を書きはじめ、まったく正式な教育機関に掠ることなく作編曲家としての地位を確立してしまうのだ。不遇を託った前衛系ミュージシャンのため支援組織・環境開発団体・オーケストラの運営に心血を注ぐと、当時は珍しかった自主レーベルの設立にも携わった。そのWATTのディストリビューターとして、ECMとはのちに深い関係を築くことになるわけである。
初期は前衛的作風を旨としたが、やがてニューウェーヴ系ロックやオペラの手法を用いた演劇風音楽に近接し、ジャンルを超えてスポットを浴びていた。あるいはタンゴやジプシーのリズムを取り入れ、それをフレンチホルンやバスクラリネットやテューバも加えた、どこかメランコリックなブラスバンドを気取っていた。パンク風の罵り声やエレクトロニクスも導入し、決して策を労した職人風ではないユーモラスな保守的独創性を、そのサウンドは包容していた。
バンド・リーダーとして、ピアニスト兼オルガニスト兼シンガーとして、もちろん個性的楽曲提供者としてコアなコミュニティ内にその名は深く刻まれる。しかし演奏家としての活動を避ける傾向に気づいた旧友2名が、それに歯止めをかけようと3年置きに企み、カーラ作品を温め合ったのがラストの3部作。ECM創設55周年に合わせ、WATT/ECMの各時代を代表する10作品のカーラ音源が、初のUHQ-CDでリリースされる。これだけ彼女の足跡を俯瞰して眺められる機会も、あるいは今回で見納めとなるかも知れない――。
RELEASE INFORMATION
FOREVER CARLA BLEY
ECM創立55周年/初UHQ-CD/10作品
2024年10月16日発売