遠い時を見晴かすような冒頭のホルンのナチュラルな風合いが実に印象的。アニマ・エテルナとのブルックナー・プロジェクトが録音でも始動。多角的に練り込まれた表現で味わえるのは、感覚の深底に降りてくると感受させる響きの妙味だ。これまでにも例えば、メンデルスゾーンの“宗教改革”でフライブルクの古楽オケと繊細極まる多様な筆致を駆使していたように、エラス=カサドがこの稀代のピリオド・オケから、豊潤な表現を全奏・ソロに至るまで自在に引き出す。第1楽章の展開部での崇高なコラールに聴く、全体と部分を往還しながら精緻に綜合させる漸強のニュアンス表現などは、まさにエラス=カサドならではのものではないか。