当盤のドヴォルザークの第8交響曲と“野ばと”が演奏された1984年のルツェルン音楽祭は〈チェコ・スロヴァキアからの音楽〉をテーマに掲げた。ノイマンはこの不朽の名作交響曲をチェコ・フィルと心から愉しむように流麗軽快に音化する。第2楽章では自然な息遣いがおのずと引き立ち、作品の深奥へと導かれる。でもこの一枚の本当の核心は巻末、1988年のスメタナ“リブシェ”序曲ではなかろうか。〈プラハの春〉音楽祭の開幕で“わが祖国”全曲の前に奏される“ファンファーレ”を含むこの序曲を、チェコ・フィルが正式録音したのはあのターリヒの1940年盤しか見当たらない。ルツェルンの50周年を祝うためと思われるこの音源は実に感慨深い。