
第二言語で恋をして
――前半の7曲について質問させてください。今作は『Jonah Yano』と『The Heavy Loop』という2枚組のアルバムとして捉えてもいいのでしょうか?
「その通り! 7曲目までが『Jonah Yano』っていうセルフタイトルアルバムみたいな感じ」
――最初の3曲は穏やかですが、4曲目“Romance ESL”でパワフルなサックスが入ってきて一気に景色が変わりますね。
「7曲全体を通して、このバンドの音楽的な幅広さが表現されていると思う。最初の数曲はソフトで静かだけど、“Romance ESL”のように楽しくてエネルギッシュなものもある。
それは僕たちの人柄も表しているような気がする。というのも、ちょっと物静かなのも本当の自分だし、大声を出して騒ぎながらビールを飲んだりとか、そういうことが好きなのも本当の自分だから。そういう人柄の幅広さもバンドで表現したかった」
――“Romance ESL”の〈ESL〉は〈第二言語としての英語(English as a Second Language)〉ですよね。
「うん、その曲は僕自身やこれまでお付き合いしてきた人たちについてのものだね。相手のほとんどは英語が第二言語だった。変な話だけど、僕にとっても英語は第二言語なんだ。だからある意味で、僕のロマンスは第二言語で起こったもの。流暢に話せる唯一の言語なのにね。世界中の人たちが第二言語で繋がっているのは面白い。今だって東京やモントリオールで第二言語でお互いを知り合っているデート中の2人がいるかもしれない。素敵で愛しいことだと思う」
――クレイロが5曲目“Snowpath”に参加していますね。彼女との出会いはどんなものでしたか?
「クレイロが出てきた頃から大ファンだった。実際に彼女に会ったのは、僕がたまたまLAにいたとき。ラッキーだったし、その出会いが彼女のツアーの前座を務めることにも繋がったんだ。そのツアーを通じて、今のバンドでアルバムも録音しようっていう気になったし、彼女とも友達になった」
――曲が出来上がった経緯は?
「もうほとんどアルバムの曲も仕上がってて、これで完成かなと思っていた頃にちょうどクレイロと会う機会があったんだ。冬だったんだけど、田舎にちょっとした良いスタジオがあるから一緒に行こうよって、遊びのつもりで行ったんだ。そこにはサウナも暖炉もあって環境も良かった。そこでくつろいでいるうちにできてしまったのがこの曲だよ。山小屋みたいなところからスタジオに行くために雪の獣道みたいなところを通っていかなきゃいけなかったから、それがそのままタイトルになってる。特に意気込まず、何も期待せずに作ったら、かえってパーフェクトなものができたんだ」
――6曲目“The Language Of Coincidence”も言語がテーマですか?
「これは昨年日本にいたときのことについての曲。僕は小さい頃は日本語を話していたし、幾分か日本人に見える。自分が周りから認識されないときに落ち着きを感じるんだ。自分がカナダ出身じゃないみたいにね。電車の中では周りに溶け込んでるし、僕が電車で座っても隣の人は立ち上がったりしない。歌詞はそんなことについてだよ。
タイトル(邦題:偶然の囁き)は、日本にいるときにたくさんの偶然を経験して、まるで僕に何かを伝えようとしているように感じたことから来てるんだ」

足りない言葉を感情表現で補う
――あなたの歌詞は個人的な内容も多いため、必然的に感情表現が重要になってくると思います。歌うとき、どんなことを意識していますか?
「言葉だけでは表現できることには限界があると思う。特にソングライティングにおいてはね。なぜなら、歌のために自分が考えていることや言いたいことを単純化しなきゃいけないから。足りない言葉を感情表現によって補うことに興味がある。言葉をシンプルにして、意味の省略や欠損を修正するんだ」
――影響を受けたシンガーはいますか。
「ファイストっていうカナダのアーティストだね。彼女は、ボーカルパフォーマンスに込めた感情を巧みに表現する名手の一人だと思う。声のボリュームとトーンを使い分ける素晴らしい技術を持っている。声をとてもアグレッシブにして、まるで目の前にいるかのように歌うことができるのと同時に、心の奥深くから話しかけるように、とても率直に表現することもできる。控えめでありながらも力強さも兼ね備えたシンガー。最大のインスピレーションを与えてくれる一人だね」