LUNA SEAの5thアルバム『STYLE』がリリース30周年を迎えた。“DESIRE”“END OF SORROW”“IN SILENCE”というヒット曲を収録した本作は、前作『MOTHER』(1994年)とともにセルフカバーと再現ライブが行われるなど名盤として知られている。今回はそんな傑作のアニバーサリーを祝い、ライター藤谷千明に本作について綴ってもらった。 *Mikiki編集部
ぜんぶカッコよくて完璧だった30年前のLUNA SEA
LUNA SEAにとって通算5作目となるアルバム『STYLE』は、1996年4月22日に発売された。いまから30年前の話である。
あの頃のLUNA SEAといえば、1994年に“TRUE BLUE”でオリコンシングルチャート1位を獲得(しかも、当時隆盛していたCMやドラマのタイアップなしでの快挙であった)し、モンスターアルバム『MOTHER』をリリース。そして1995年にはバンド史上初の東京ドーム公演を即日ソールドアウトさせるなど、まさに破竹の勢いでロックシーンを駆け上がっていった。あれから30年。自身が年齢を重ねるにつれて、〈彼らは20代でこの偉業を成し遂げていたのか〉と、その〈すごさ(ヤバさでもある)〉を改めて実感している元・少年少女たちも少なくないのではないだろうか。楽曲やヴィジュアル、ミュージシャンとしての佇まいはもちろんのこと、そういった〈バンドのスタイル〉にもカッコよさを感じていた。LUNA SEAは、ぜんぶカッコよくて、完璧だった。
相反する感情と音を呑み込んだ、緊張感漂うアルバム
そんな中でリリースされた『STYLE』は、相反するものが交錯する、いや、〈あえて〉交錯させている作品だった。ざらついたアナログレコードのノイズから始まる1曲目の“WITH LOVE”は、なつかしさを感じさせる甘やかなメロディと、重たいグルーヴが共存している。続いての”G.“は一転して、切れ味の鋭いリズムとギターが爆速で炸裂する。当時のインタビューでRYUICHIは「聖なるものと罪深きものの対比を描いた」(「バックステージ・パス」1996年6月号)とコメントしているが、ここでもまた相反するものを並び立たせているのだ。
LUNA SEA的な(および、昨今〈90年代ヴィジュアル系的〉だとされている)サウンドは、ゴスの非日常性や過剰さ、ハードコア由来のスピード感、ニューウェーブ由来の浮遊感によって構成されているように思う。『STYLE』からは、一旦築き上げたサウンドからさらに一歩踏み出そうとしており、本作の中盤を構成する3曲にはとくに様々な挑戦がみられる。“HURT”は、ジリジリとにじり寄るような重低音が渦巻き、〈廃墟に舞う蝶〉のようにうねるリズムの“RA-SE-N”(前述した「バックステージ・パス」でSUGIZOは5/4拍子が自然に聞こえる曲であると述べている)、湿度のある妖艶さを持つ”LUV U“と続いていき、ストリングスを取り入れた10分以上にも及ぶ大作バラード“FOREVER & EVER”へと繋がっていく。世紀末の不穏な空気がそのまま刻まれた“1999”から、先行シングルである“END OF SORROW”、“DESIRE”と続き、晴れやかな開放感をもたらす“IN SILENCE”を経て、また一転して閉塞感のある世界と微かな祈りを表現する“SELVES”。そんな、相反する感情とサウンドをまるごと呑み込んだような混沌がもたらす緊張感が終始漂っているのが本作である。
冒頭で〈タイアップなしでの1位〉に触れたが、本作に収録されている“IN SILENCE”はバンド初のドラマタイアップ曲である(といってもドラマタイアップのために制作されたのではなく、後から米ドラマ「シカゴ・ホープ」第1シーズンの日本語版テーマソングに起用された)。シングルのカップリング曲(“LUV U”)をアルバムに収録したことも初めてのことで、当時の彼らがバンドの次のステージを模索していたことがうかがえる。そういえば、RYUICHIがインタビューで(これまでの彼のイメージと相反するような)サーフィンなどの話をするようになったのもこの時期だったように思う。
相反するものを抱えたまま立ち続ける〈STYLE〉
同年12月23日、横浜スタジアムでの〈真冬の野外〉にて、1997年のあいだの活動休止と各メンバーのソロ活動が告げられた。「NHK紅白歌合戦」出場、秋元康プロデュース、最新鋭のクラブミュージック、あるいはオルタナティブロックを取り入れたアプローチ、海外ミュージシャンとの共演に至るまで、様々な方向性と結果を残したソロ活動を経て、“STORM”での鮮烈な帰還と『SHINE』(1998年)、『LUNACY』(2000年)という2枚のアルバムリリース、そして、2000年の終幕。どんなに完璧だと思っていた存在だって形を変えていく。変わらないものはないのだ。
その後、2007年の〈GOD BLESS YOU ~One Night Dejavu~〉と銘打たれた一夜限りの東京ドーム公演、2010年に本格的な復活〈REBOOT〉を遂げた。そして『A WILL』(2013年)、『LUV』(2017年)、プロデューサーにスティーヴ・リリーホワイトを迎えた『CROSS』(2019年)といったオリジナルアルバムのリリースや3度の主催フェス〈LUNATIC FEST. 〉などを経て、2023年には『MOTHER』とともに、本作の再録もリリースされ、ツアーも行われた。過去も未来も受け止めて、LUNA SEAは続いている。
今年2月、真矢の逝去が報じられた。昨年11月の〈LUNATIC FEST.〉のステージに立つ気丈な真矢の姿が思い出される。今はただ、感謝の気持ちと悲しさと寂しさがある。そして、約6年ぶりとなる新曲のリリースが発表された。タイトルは“FOREVER”だ。 変わらないものはない、のだけれども。それでも。相反するものを抱えたまま立ち続けること。それは30年前、彼らが〈STYLE〉と名付けたものである。LUNA SEAは続いていく。
