
フィードバックを受け変遷したchao!とジュン・パーカーの作風
――絵を描く勉強もされていたんですか?
chao!「はい、高校・大学でデザインを学びました」
――学生時代からオリジナル作品を作って発表されていたんですか?
chao!「そうですね、ただ今とは作風が違って、もっとリアルでアメコミみたいな画風でした」
――ジュンさんも音楽を始めた当初は今と違って、もっとフォーク寄りだったんですよね。
ジュン「そうです。中学生の頃に、因幡晃や伊勢正三といった日本のフォークシンガーたちに夢中になり、音楽を始めました」
――chao!さんは、どのように現在のスタイルになったんですか?
chao!「コロナ禍までミュージシャンをやってたのですが、限界を感じて、漫画家になろうと思ったんです。漫画をたくさん書いて出版社に持ち込んでいたんですよね。その時に描く絵がより漫画っぽいタッチになり、今のスタイルになりました。あと出版社の人から絵だけは褒められる(笑)。それでイラストに専念するようになりました」
――行動とフィードバックを通じて方向性が固まっていった形ですね。
ジュン「僕も似ているところがあります。音楽活動を始めた当初はフォーク色が強かったのですが、コラボレーションやフィードバックを通じて、今の音楽性になりました」

――chao!さんのInstagramは海外の方のコメントも多いですし、海外で火がついた感じはありますか?
chao!「仕事のオファーはキャリア当初から日本でもあったのですが、海外の方がアートへのリスペクトが高い気はします。日本では〈お金持ち〉で尚且つ〈もの好き〉でないと絵を買ってもらえない傾向が強いのですが、海外ではこのどちらかであれば、買ってくれることが多いんです」
――ジュンさんもそう感じますか?
ジュン「そうですね。オーストラリアについていうと、例えばメルボルンでは街を上げてグラフィティーアートやストリートアートを支援していて、アーティストが自由に絵を描いていい壁などもあります。また、国としても現代アートを盛り上げていくためにさまざまな施策を打ち出しています」

シティポップの魅力は〈本心を隠した強がり〉
――シティポップは世界で注目が高まり、日本に逆輸入された側面がありますよね。chao!さんもジュンさんも、その作品を語る上で〈シティポップ〉や〈80s〉は必須のキーワードですが、そういった世界的なトレンドとキャリアがリンクしている感覚はありますか?
chao!「そうですね、80s的なイラストが流行り始めた時、〈これ、描けるな〉って思ったんです。時代のニーズと自分の提供できるものがマッチした感覚です」
ジュン「僕にもその感覚はありますね。フォークやソウル、ボサノバなど、シティポップ以外にも、僕が影響を受けたジャンルはたくさんありますが、現在のオーストラリアのシーンで、日本にルーツを持つ自分が、ミュージシャンとして存在感をアピールするためには〈シティポップ〉に絞り込むのが最適だと思ったんです」
――オーストラリアの音楽というと、真っ先に思い浮かぶのはAC/DCやテーム・インパラ、ニック・ケイヴといったロックバンドです。オーストラリア人のシティポップに対する反応はいかがですか?
ジュン「すごくポジティブな反応をもらってます。オーストラリアは国として〈多文化主義〉を掲げているので、異なる文化への受容力が高い。そして近年は日本の文化がクールなものとして看做されているので、〈機は熟した〉という感じですね」

――シティポップを聴くようになったきっかけを教えてください。
chao!「最初は真心ブラザーズや奥田民生、THE BLUE HEARTSなど、男くさくて人間味のあるロックが好きでした。その流れでフォークも好きになりました。確か、シュガー・ベイブを聴いたのをきっかけに、〈おしゃれな音楽もいいな〉と思うようになったんです。ただ、ある日突然シティポップに目覚めたというのではなく、例えば松任谷由実の“ルージュの伝言”のようなニューミュージックを聴いていたら、いつの間にかシティポップの領域に足を踏み入れていた、という感覚かもしれません」
――シティポップが特に好き、という訳ではないのでしょうか?
chao!「好きな音楽の1つ、という感じですね」
――シティポップのどこに魅力を感じますか?
chao!「例えば、恋をしているとして、〈大好きです!〉と真っ直ぐ想いを伝えるのがフォークだとしたら、シティポップは本心を隠して、強がっているイメージなんですよね」
ジュン「そうそう、そこがいいんですよね(笑)」
――ある種のツンデレ的な魅力でしょうか? 好きなのに冷たくしてしまったり、カッコつけてあえて本心を隠してしまったり、それはそれで〈人間くささ〉とも受け取れます。
ジュン「直接的な歌詞を避けて、リスナーの想像に委ねるんですよね。ただ、僕はシティポップにもう少しフォークの直接的な表現を乗せてもいいかな、と思ってるんです。今年7月にリリースしたシングル、“Summer Silhouette”では〈泣かせる⾔葉 トランクに詰めて 君を抱きしめるから〉のような攻めたフレーズも入れてます」