(左から)アレックス・ウィンツ(ギター)、ブライアン・リンチ、クレイグ・ハンディ(テナー・サックス)、ルイス・ペルドモ(ピアノ)、カイル・スワン(ドラムス)、マーフ・オーキャンプ(パーカッション)、ボリス・コズロフ(ベース)

7という数字に魅せられた、ジャズ&ラテンのハイブリッド・ミュージック

 ジャズと共に、ラテン・ミュージックの世界でも長いキャリアを誇る、ヴェテラン・トランペッターのブライアン・リンチは、子供の頃から7という数字の神秘性に魅せられてきた。1週間は7日であり、音楽は7度の音階でできていていて、ラッキー7という幸運のシンボルでもあるということが、ブライアン少年の好奇心を刺激していたのだ。パンデミックの自粛期間中にリンチは、7をテーマとして、7人のミュージシャンで、1曲が7分ほどの長さの、7曲のオリジナルで、アルバムを制作するというアイディアを閃く。

BRIAN LYNCH 『7x7by7』 Hollistic MusicWorks(2024)

 それぞれの曲は、アンサンブル、ソロ・パートが、同じテンポ、フォーム、タイム・スパンで構成され、交換することによってヴァリエーションが広がる仕掛けが施されている。それぞれの曲には、7の倍数のサブタイトルがつけられ、それぞれの年齢の時のリンチの思い出が込められており、21歳から63歳までの彼のキャリアの中でのエポック・メイキングな瞬間を、音楽で描いている。

 リンチは、パンデミック中に曲を書き、2021年の10月に、ラテン・テイストを醸し出すルイス・ペルドモ(ピアノ)、ヴェテラン・サックス・プレイヤーのクレイグ・ハンディ(テナー・サックス)、新進気鋭のアレックス・ウィンツ(ギター)、重厚なグルーヴのボリス・コズロフ(ベース)ら、7人の凄腕アーティストを招集し、スタジオで録音を行なった。

 アルバムは、リンチの2つのバックグランドである、ジャズとラテン・ミュージックを自由に行き来して、グルーヴィーに7人のアンサンブルと、熱いソロが交錯し、複雑な仕掛けを感じさせないが、それぞれの曲の不思議な一致に、気が付かされる瞬間がある。カイル・スワン(ドラムス)とマーフ・オーキャンプ(パーカッション)の柔軟なリズムと、ペルドモ、ウィンツのバッキングが、ソリストに躍動感を与えリスナーを陶酔感へと導く。リンチの少年時代からのテーマが、60年近い時を経て、人生の足跡を辿った、壮大な音楽へと結実した。そしてブライアン・リンチの音楽を巡る旅は、まだ続く。