2000年代初頭から現在にいたるまで、「冬のソナタ」「愛の不時着」「梨泰院クラス」などの韓国ドラマがここ日本で大きなムーブメントを起こしてきた。時代が進むに連れて数多くのストリーミングサービスが誕生したことで、今では韓国に限らず他のアジアの国々のコンテンツにもアクセスしやすくなったように思う。
そうした技術の進歩もあってか、今では韓国に負けじとタイの映像作品も日本で人気だ。特にタイを代表するテレビ制作会社GMMTVが手がけるドラマや映画は、日本をはじめアジア各国で高く評価され、映像を彩る音楽にも注目が集まっている。
そしてこのたび、GMMTV制作のドラマや映画の主題歌などを収録したコンピレーションアルバム『ベスト・オブ・GMMTV』がリリースされた。日本とは異なるタイならではのテーマや表現が内包された楽曲から、特に聴くべき5曲をライターの伊藤美咲に選曲・レビューしてもらった。 *Mikiki編集部
ジェミナイとプーウィンが日本のファンに向けて歌ったボーナストラック
タイの人気エンターテインメントカンパニー・GMMTVが、日本限定アルバム『ベスト・オブ・GMMTV』をリリースした。GMMTVは、タイのエンタメ業界を代表するテレビ制作会社。さまざまなコンテンツを発信しているなかで特にBLドラマに強く、その作品の数々は世界中で人気を集めている。
『ベスト・オブ・GMMTV』にはGMMTVの人気ドラマの楽曲に加え、日本限定のボーナストラック2曲が収録されている。そんな全22曲というボリューム満点の本作より、本稿では特に注目してもらいたい5曲を取り上げていく。
ジェミナイ“First Love (Japanese Ver.)”
(from「マイ・プレシャス」)
いきなり終盤に収録されているボーナストラックの話になるが、やはり本作を紹介する上で絶対に外せないため、最初に紹介しておきたい。ボーナストラックの1曲である“First Love”は、タイの大ヒット映画「マイ・プレシャス」を彩る楽曲だ。
「マイ・プレシャス」は台湾の人気作家、九把刀の青春恋愛小説が原作となっており、日本でも山田裕貴と齋藤飛鳥が主演を務めた「あの頃、君を追いかけた」という邦題で2018年に映画化されている。
そんな世界中で大ヒットした作品の主題歌となった“First Love”は、タイトル通り初恋を歌ったピュアなラブソング。本作に収録された日本語バージョンで歌唱しているのは、GMMTVに所属する俳優/歌手のジェミナイ。2022年、初主演作となったBLドラマ「マイ・スクール・プレジデント」がアジア各国で人気を集め、作品によっては主題歌や劇中歌を担当するなどマルチな才能を発揮している。
ジェミナイが歌う“First Love”は、〈もし過去を変えれたら/今も愛し合っているかな/手を握って/一緒に笑ってるかな〉〈ただ君の幸せを/ずっと祈って/あの日の笑顔が/消えないように〉と離れた場所にいる初恋の相手の幸せを祈る歌詞に切なさを感じつつも、ひとつひとつの言葉を丁寧に紡ぐ歌声にグッと心を掴まれる。
プーウィン“Living For You (Japanese Ver.)”
(from「ネバー・レット・ミー・ゴー」)
もう1曲のボーナストラックは“Living For You”の日本語バージョン。孤独な御曹司のヌアンと、彼と同い年のボディガードであるパームのラブストーリーを描いた大ヒットBLドラマ「ネバー・レット・ミー・ゴー」に起用された楽曲だ。
今回日本語バージョンを歌うのは、「ネバー・レット・ミー・ゴー」でヌアン役を務めた俳優/歌手として活躍するプーウィン。〈道に迷っても/きっと大丈夫さ/僕がついているよ ずっと〉と、いつどこにいても〈君〉の味方でいることを真っ直ぐに歌ったドラマとリンクする純愛ソングだ。
日本語バージョンは、日本のファンへの特別なプレゼントとして制作されたもので、プーウィンも「気持ちを込めて歌った」とコメントしている。歌声だけでなく、時折聞こえる息遣いからも彼が楽曲に込めた温かい気持ちが伝わってくる。歌声の裏で奏でられる清らかなピアノも美しいので、ぜひドラマのシーンを思い浮かべながらじっくりと聴いてみてほしい。