今年27歳を迎える男の胸に去来したのは〈終えること〉、ではなく〈再生すること〉。多彩すぎるゲストを迎え、新メニューに挑んだ『R』はどんな味に仕上がった?
全盛期はまだこれから
本名の廣野凌大として俳優活動を行う一方で、パンクやヒップホップをルーツに独特のミクスチャー感覚を発揮した音楽性で注目を集めているアーティスト・プロジェクト、Bimi。2023年にキング内のレーベル・EVIL LINEからメジャー・デビューし、2024年には3枚ものEPを届けたのに続いて、早くもメジャー初アルバム『R』を完成させた。その間にも多数の舞台に出演し、楽曲提供の仕事などもこなしていることを考えると驚異的な創作ペースだが、その原動力には〈焦り〉があると彼は語る。
「俺はロックが好きで〈27クラブ(27歳で亡くなったミュージシャンたちを指す言葉)〉に憧れを持っていたから、27歳までに音楽で成功して辞めることを目標にしていたんです。なので25歳でのメジャー・デビューは遅すぎたし、ほかにも俳優からキャリアをスタートしたことによるジレンマやいろんな焦りが自分のなかにあって。マグロと一緒でずっと泳いでないと死んじゃうんですよ(笑)。今年27歳になるけれど、メジャーになったことで背負っているものも増えたし、ぶっちゃけ自分の全盛期はまだこれから来る予感がするから、ここで投げやりになって辞めるのはダサいし違うんじゃないかと。この先もBimiとして活動するにあたって、過去の自分の覚悟を一度殺して供養したいと思ったんです。その意味での〈Reborn〉や〈Restart〉、それと自分の名前の〈凌大(りょうた)〉の頭文字にかけて、もう一度兜の緒を締める思いも込めた『R』というタイトルにしました。要はスクラップ&ビルドですね」。
凝り固まっていた自分の価値観を一度壊して新しい自分を作り上げる。そんな意識のもと制作を進めたという本作で彼は新しいことに意欲的に挑戦。その結果、もともとジャンルレスだった楽曲の強度がさらに上がった。その最たる例が、多彩なゲストを迎えたコラボ曲。ドリル・ビートと和の要素が合わさった“百鬼夜行”では若手注目株のWhoopee Bomb、ラヴェルの〈ボレロ〉をネタ使いしたオーセンティックなラップ曲“無敵”では呂布カルマとマイクを交わしてラッパーとしての才を誇示する。
「Whoopeeくんとはレコード会社が同じで、俺があるイヴェントに出演したときに遊びに来てくれて、そこで意気投合しました。彼はオートチューンをゴリゴリに使うタイプで、俺は低めの声なので、そのガチャガチャ感が妖怪っぽくなったかなって。この曲は今後いろんなラッパーやシンガーに参加してもらってマイクリレー曲にしていきたいです。呂布さんは、僕もそうなんですけど思ったことは包み隠さず口にするタイプで。誤解されたり、批判されたりすることもあるんですが、そういうところが似てるなと思って、〈一緒に曲を作りませんか?〉ってLINEしたのが始まり。〈ボレロ〉も発表当時は批判されたらしくて、それも含めて反骨精神の塊みたいな曲ですね」。