技術的な拙さをチャームに変えるアンサンブルと、2人のヴォーカリスト兼ソングライターが発するフックたっぷりのメロディーで、いまインディー・シーンの話題を集めているジャムトハイボール(通称ジャムハイ)。建築/インテリアの学校を卒業したばかりの真白と朱里、現役高校生の栞から成る3人組ロック・バンドだ。

 「私は地方から上京して美術学校に入ったんですけど、東京で絶対バンドをやりたいと思っていたんです。同級生だったあかりん(朱里)が昔、軽音部に入っていたことを聞いて、〈バンドを組まない?〉と猛プッシュしていたんだけど」(真白)。

 「ずっと断ってたんです(笑)。軽音部はすぐ辞めちゃったんですよ。楽器もほとんど弾けなかったし」(朱里)。

 「でも、2023年の〈JAPAN JAM〉に2人で行ったとき、あかりんが〈バンドやりたい〉と言ってくれて。その場でバンド名を考え、〈JAPAN JAM〉からジャムを付けた結果、ジャムトハイボールになりました」(真白)。

 その後、2024年に下北沢SHELTERで初ライヴを敢行。初代ドラマーの脱退を経て、SNSでのメンバー募集を見た栞が加入した。

 「私は高校の部活でドラムをやりつつ、授業帰りにインディーズのイヴェントに行くようなライヴガールだったんです。周りにジャムハイの初ライヴを観た友達がいて、その子が〈めっちゃいいバンドがいた〉と教えてくれて。そのあと、私も音源を聴いて好きになったし、これはやるしかないと思ってDMしました」(栞)。

 最愛のバンドは?と訊くと、真白はマカロニえんぴつとandymori、朱里はSEKAI NO OWARI、栞はサザンオールスターズとberry meetを挙げる。そんな彼女たちが、初の全国流通盤となるEP『Ding Dong Journey』を完成させた。リリース元はインディーの名門、KOGA。

 「仲良くなった楽器屋の店長さんに、レコーディング・スタジオはどこがいいかを相談したら、好きなCDに載っている場所に連絡するといいよ、と言われたんです。そこでサバシスターのCDを見たら、STUDIO K5と書いてあって」(真白)。

ジャムトハイボール 『Ding Dong Journey』 KOGA(2025)

 STUDIO K5はKOGAの所有スタジオ。メールに書かれていたバンド名にピンときたKOGAの主宰、古閑がデモを聴き、リリースを決めた。彼の全面バックアップの下で制作された『Ding Dong Journey』は、先行配信された“君はまるでダークマター”“今世紀最大のスクープ”を筆頭に、ジャムハイのカラフルで元気いっぱいな魅力に溢れている。

 「その2曲は私の作曲なんですけど、“今世紀最大のスクープ”は地元の友達や元バイト先のマスターとかに〈あなたの今世紀最大のスクープは?〉と訊いて、そのエピソードを曲に散りばめました。お父さんとお母さんからは〈娘がバンドを始めたことかな〉と返ってきて、それをサビに(笑)」(真白)。

 「“君はまるでダークマター”は、制作しながらアレンジがどんどん楽しい方向に向かっていった。ジャムハイの楽曲って〈楽しそう〉が指針なんです」(朱里)。

 ブラス・ファンク風の“インジャードボーイズ”、ふわふわとした浮遊感を醸す“シーサイドダーリン”は朱里の作曲。

 「まっしー(真白)がロックな曲をたくさん作ってくれたから、私は今回ポップに徹しようと」(朱里)。

 「“インジャードボーイズ”は、スネアやハイハットを使って可愛らしい感じをめざしました」(栞)。

 本作の資料で、KOGAは〈こんなバンドをみんな求めていた、一緒に彼女達を育てていこう!〉とアピールする。未知数の将来、無限大の可能性が眼前に広がっているジャムハイだが、抱く夢は?

 「いちばんの目標はやっぱり〈JAPAN JAM〉に出ること」(真白)。

 「いつか絶対に出たいよね。あとワンマンライヴをしたいな。ワンマンができるくらい、みんなに知ってもらえる一年にしたいですね」(朱里)。

 


ジャムトハイボール
真白(ヴォーカル/ギター)、朱里(ヴォーカル/ベース)、栞(ドラムス)から成る3人組バンド。2023年に東京で結成。2024年に下北沢のSHELTERで初ライヴを行い、以降は都内のライヴハウスを中心に活動している。2024年6月のファーストEP『ジャムハイ到来!!』、同年に連続リリースされたシングル“夢見る帝国図書館”“こいものがたり。”など配信での楽曲発表を経て、初の全国流通盤となるEP『Ding Dong Journey』(KOGA)を4月9日にリリースする。