名人位獲得の経験もあるトップ棋士と、ドイツオペラを専門とする音楽学者による異色の対談。AIの進化によって将棋では正解とされる手が研究され、似た戦法を使うことが増えているという。そうして均質化していくと個性的な〈名局〉が生まれることはあるのだろうか。将棋が観戦されるエンタメとしてプロというものが成立していると捉えると、均質化の流れは果たして正しいのか。そうした問いからはじまり、芸術性や美という抽象的なものを言語化する二人の対話が示唆に富んでいた。合理的に生きるため勝利や正解へ至る道すじの最適化が求められるこの時代だからこそ、この一冊を読んでその是非を再考してみて欲しい。