花見、ビヤガーデン、忘年会……そんな浮かれ気分が満載の6人組バンド、ジャポニカソングサンバンチジャズラテンソウルロックンロールなど美味しい具材の数々を、バンドというアツアツの鉄板で豪快に炒めた無国籍サウンドは、どこか不思議と懐かしい味がする。ソングライティングを担当するのは、ヴォーカル/サックスの千秋藤田でぶコーネリアスというハードコアパンク・バンドでも活動している千秋は、そこでは自分のやりたい音楽が形になりにくいと考えていた。

  「そんな時に音楽前夜社に出会ったんです。GORO GOLOとか音楽前夜社関係のアーティストの音を聴いたらどれもおもしろくて。それで前夜社の人たちとつき合っているうちに、〈お前の書いた曲、おもしろそうだからいっしょにやろう〉みたいな感じで誘ってもらったんですよね」(千秋)。

 音楽前夜社は、GORO GOLOをはじめ、さまざまなミュージシャンが集まった音楽集団。そこに所属する5人が千秋をバックアップする形でバンドが結成された。そして、スティールパンやサックス、鍵盤など賑やかに音色を散りばめて完成したのが、ファースト・アルバム『Japonica Song Sun Bunch』だ。

ジャポニカソングサンバンチ Japonica Song Sun Bunch Pヴァイン(2014)

  「俺、楽譜書けないんですよ。なので、まずみんなの前でざっくり演奏して大きな素材を渡すと、それが理想の形で返ってくる。あとはフィーリングで伝える感じですね。〈もっと南国っぽく!〉とか」(千秋)。

  「千秋が〈こういう曲をやりたい〉っていうのを言った時点で、みんながそれをイメージして楽しくなるんですよね。〈こうしたい!〉っていうのがどんどん湧いてくる」(しいねはるか、ピアノ)。

 そんな彼女に千秋が書く曲の魅力を尋ねると、「まず歌詞が良いんですよ、一冊の本にしてほしいくらい。あとメロディーも良いし、言葉の乗り方もすごくおもしろい」とのこと。確かにジャポニカの曲は多彩な音楽性が混じり合いながらも、核にあるのは日本語ポップスとしてのフレッシュな魅力だ。それはどこか、多彩なラテンのリズムを採り入れた戦後のリズム歌謡曲を思わせたりもして。

  「そういう音楽を勝手に継承しているところはありますね。曲を作るなら、小さな子供から禿げ上がったおじいちゃんまで、みんなが歌えるものにしたい。だから歌詞も無駄な言葉を省いて、メロディーに乗せた時に日本語が活きるように母音とか子音の並びとかをすごく考えてます」(千秋)。

 子供の頃は母親が好きだったレゲエマイケル・ジャクソンを聴いて育ち、10代の頃にハードコア・パンクと日本語ポップスにハマった千秋。バッド・ブレインズ加藤和彦を共にリスペクトする彼は、「精神面は違いますがハードコアと歌謡曲は近いところがあります、どっちも柔軟性があって」と言うが、そうした柔軟性がバンドにもしっかりと息づいている。

  「〈トロピカルっぽくしよう〉とか〈いろんな音楽を混ぜよう〉とか、全然意識してないですね。メンバーも千秋と同じようにパンクとかレゲエとか歌謡曲とか幅広く聴いているので、曲を膨らませていくうちに自然といろんなリズムになってくるんです」(しいね)。

 「みんなでいろんな音を出して、それぞれの音に反応していく。そうやって遊んでる時がいちばんおもしろい」(千秋)。

まるで食卓を囲むようにメンバーが輪になって音楽と向き合い、まず自分たちが楽しむことで最高のパーティー・ソングを生み出すジャポニカソングサンバンチ。そんなバンドを〈お店に例えたら?〉というお題を出すと、ふたりがあれこれ考えた末に出た答えは〈赤提灯コンビニ〉。何でも置いてあって、24時間気軽に一杯ひっかけられるお店。只今、絶賛営業中です。

 

▼関連作品

左から、でぶコーネリアスの2013年作『DEVPHONIX』(PERFECT)、GORO GOLOの2014年作『Golden Rookie, Goes Loose』(Pヴァイン)、リズム歌謡の楽曲を集めたコンピ『黄金のニューリズム』(ビクター)、バッド・ブレインズの82年作『Bad Brains』(Roir)、加藤和彦の関連楽曲をまとめたコンピ『加藤和彦作品集』(コロムビア)

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