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青の季節を生々しく封じ込めた一枚

 「バズリズム02」やSpotifyの〈Early Noise〉で話題を呼んだ2022年結成の大阪発・3ピースによるファースト・アルバム。YouTube初投稿にして、一躍彼女たちの名前を世に知らしめた“Musica”から物語が始まり、ソニック・ユースのようなスリリングな演奏を聴かせる“Coming-of-age Story”へと至る道のりからは、羊文学に続くオルタナ・シーンの新たな顔役候補の登場かと思われた。しかし、3人のヴィジュアルが目まぐるしく変化していったように、音楽性も曲ごとに大きく変わり、MONJOEを共同アレンジに迎えた“悪夢のような”ではファンク・ベースを鳴らし、“27:00”ではパーカッションとブレイクビーツを組み合わせ、“春”ではジャージークラブとR&Bとギター・ノイズを融合。この振れ幅にはやや危うさも感じるが、やはり本作は自分たちの若さと向き合った作品なのだと言えよう。〈私に足りないのは人生経験とあと何かしら〉と歌った蓮月はその後の人生をときにペシミスティックに、ときに刹那的に綴り、本作は〈あいつらの誰にも悪く言わせないよ〉と言い放ったうえで、〈幼い私を嫌わないで〉というラインで幕を閉じる。青の季節が残酷なまでに生々しく閉じ込められ、〈混沌こそ未来〉を体現した。 *金子厚武