ここ最近、あまり音楽を聴いていなかった。肌身離さず持ち歩いていたイヤホンが壊れてしまったからだ。
私は外出する時はもちろん、家にいる時もずっとイヤホンを耳にはめて何か聴いていないと落ち着かない。スピーカーで聴くのもいいけれど、耳の穴に直接音が届き、自分1人だけの世界に浸っている感覚が好きだ。
いつも一緒にいた相棒が使いものにならなくなったのをきっかけに、徐々に音楽を聴くことが生活のルーティンから外れていっていた。
音楽配信サービスのアプリを開くと、ジャンル関係なくアーティストが所狭しと並べられていて、すぐに再生できるようにスッキリと導線が整えられている。その画面を眺めていても、あまりワクワクしなくなった。惰性でアプリを開いては、何も聴くことなくそのまま閉じてしまうことが多くなってしまった。
再生履歴から推測されて、オススメされた曲たちを聴く代わりに、通りすがりの人々の話し声や、車の走行音など、今までは音楽で完全にシャットアウトしていた雑音が飛び込んでくる。これはこれで悪くないな、と思ったりするが、やはり耳が寂しくソワソワして、心許ない気分になってしまう。完全にイヤホンが壊れたことで、八つ当たりのように音楽を聴くことを拒否してしまっていただけだった。近頃は、電車や徒歩で移動している時もずっと魂が抜けたような、冴えない気持ちでいる。
新しいイヤホンを手に入れたら、夜道を歩きながら爆音でブランデー戦記の曲を聴きたい。NewJeansのミンジがファンに紹介していたことで話題になっていたバンドだが、私は“ストックホルムの箱”という曲のイントロのギターが力強くて好きだ。そして曲中のフレーズの所々から感じる若さとオトナっぽさの共存、そしてメンバーのミステリアスな雰囲気も含めて私にとっての理想的なバンドの姿で、完全なる〈憧れ〉として、彼女たちの音楽がキラキラと鳴る。
生まれ変わったらギターヴォーカルになってみたいな、なんて想像をしてみる。
父の部屋で、弾かれずにずっと置いてあるギターは埃をかぶっているだろう。
【写真と文】hana:8人組のHIP HOPユニット、lyrical schoolでMC/ヴォーカルを担当。lyrical schoolでは現体制での初作『DAY 2』(ビクター)に続き、待望の新曲“dance”が配信中。5月から続いた〈DAY 2 TOUR〉も走り抜けたばかり。以降の予定も決まってきているので、最新情報は〈https://lyricalschool.com/〉にて!