COMING OF AGE
その登場時から多くのメディアで絶賛を浴び、リリースのたびに話題の渦を大きく広げてきたシーン期待のアップカマーがついにメジャー・デビュー! 充実しまくったファースト・フル・アルバム『BRANDY SENKI』に投影された未来の色は……?
若者のやりきれない痛みを繊細に紡ぐ見事な表現力
ここ2年ほどで注目度急上昇中の大阪発3ピースが、ついにメジャー・デビューを飾ったファースト・アルバム。前作EP『悪夢のような1週間』でブラッシュアップした音像はさらに進化を遂げており、イギリスのダーク・コメディ・ドラマ「このサイテーな世界の終わり」に着想を得た、従来から持つ終末感とリズミカルなビートの掛け合わせで魅せる“The End of the F***ing World”を筆頭に、無軌道なティーンエイジャーを描いた青春映画に最高のサウンドトラックとして溶け込みそうな切なく儚いナンバーが基軸を成す。〈出鱈目なダンスを踊ろう〉と思いがけないドリーミーな展開へ誘う“春”、蓮月の物憂げなヴォーカルを慮るようにストリングスがむせび泣く抒情詩“メメント・ワルツ”といったさまざまな新味を届ける一方、ブレイクのきっかけとなった“Musica”など、初期衝動が渦巻くロックも収録。ハッとさせられる歌詞や心に染みるフォーキーなメロディーをちりばめ、今を生きる若者のやりきれない痛みを繊細に紡いでいく表現力は見事で、特に愛おしい未熟さが滲む“Fix”“Untitled”――弾き語り色の強いラスト2曲が全編を優しく抱きしめる尊い流れに撃ち抜かれた。 *田山雄士