〈キャッチー〉の概念を再定義するべく、胸をキュンとさせる煌びやかなポップネスを獰猛なオルタナティヴ精神でぶちまける。平均年齢22歳の4人組バンド、Viewtradeは2020年6月に同じ高校の3年生だった池田リン。と1年生のササキソラがナンバーガールの話題で意気投合したことから始まった。

 「幼少期からJ-Popを好きで聴いていて、小学生でゲスの極み乙女。やUNISON SQUARE GARDENにハマったんです。中学に入ると、とある先輩からナンバーガールを薦められて、そこから日本のオルタナティヴ・ロックに傾倒していきました」(ササキソラ)。

 「ナンバーガールに出会ったとき、ギター、ベース、ドラムの衝動だけで人を熱狂の渦に巻き込むバンドを初めて目撃した感覚があったんですよね。それがJ-Pop志向を持ちつつオルタナ精神を忘れないViewtradeのスタイルに繋がっていきました」(池田リン。)。

 ササキと音楽の好みが近く、演奏スキルも高かったベーシストのぱんだが結成時から1年のサポート期間を経て正式メンバーとなり、2022年に前任ドラマーの脱退に伴い共通の知人を介して知り合った文哉が加入。池田とササキの自由な発想で作られた、アニソンやゲーム音楽の要素も含む〈ネオ・ミクスチャー〉な楽曲を、演奏力の高いリズム隊が底上げする布陣が出来上がった。

 「なるべくテクニカルなことをしている同世代のバンドに入りたいと思っていたところに、Viewtradeと巡り合いました。一曲一曲をどういう叩き方で表現しようか、どうやって伝えようかと試行錯誤して、理想に追いつくべく日々練習しています」(文哉)。

 だが、身近なバンドがショート動画を通じてヒットを飛ばすようになり、自分たちは目に見えた結果が出ないことへの焦り、不安などが各々に募るようになる。首の皮一枚で繋ぎ留められていた状況だったが、池田が自身の本質に気付いたことでバンドに転機が訪れた。

 「僕の心の表面はザラザラパリパリしているから、物事を斜めから見たり、風変わりな言い回しで状況を形容したりするのがすごく好きなんです。でも心の中は光っていることに気付いたんですよね。誰かに愛を届けたい、人を救うために生きていきたいという気持ちがすごく大きくなり、それからお客さんが熱を持って応援してくれるようになったし、バンドの空気も良くなっていったんです」(池田)。

 「池田先輩が変わってから、3人も〈この人についていきたい〉と信頼を置くようになったんです。この1年で頼りがいのあるヴォーカリストになりましたし、4人も前以上に仲良くなったので、それぞれが主張しやすくなったんですよね」(ぱんだ)。

Viewtrade 『RE POP!!』 KOGA(2025)

 そして完成したファースト・フル・アルバム『RE POP!!』の〈RE〉には〈バンドが生まれ変わった〉という意味も込められている。同作には苦境を乗り越えたあとに制作された楽曲も多く、変拍子や転調が特徴の痛快でロマンティックなポップスにして、ポジティヴなムードが漂う“リポップ・リプレイ”は、池田がメンバーに宛てて歌詞を書いた。さらに、“センリツ特急”や“禁断シンフォニー”ではボカロ・カルチャーを踏襲したバンドの要素を取り入れるなど、意欲的な挑戦も詰め込まれている。

 「解散の危機を乗り越えたことで、深みも強さも増した感覚がありますね。メンバーに向けてこんなにもストレートな歌詞を書けるんだから、絶対に他のバンドに負けないと思うんです。どんな経験もすべて前向きな力に変換して届けられる自信があるので、これからも人生と自分の心に本気で向き合っていきたいです」(池田)。

 「メンバー全員自我が強いけど、全員がお互いを尊重できているんです。バンドに勢いがあるこのタイミングで初のフル・アルバムをリリースできることがすごく嬉しいですね。今作で〈整った〉感覚があるので、ここからもっと4人で音をぶつけ合って、キラキラしたポップ・シーンの中で〈オルタナ精神〉を鳴らしていきたいです」(ササキ)。

 


Viewtrade
池田リン。(ヴォーカル/ギター)、ササキソラ(ギター)、ぱんだ(ベース)、竹中文哉(ドラムス)から成る4人組バンド。2020年に結成され、2022年の“チェイサーの最終戦”以降、コンスタントに楽曲を配信している。メンバーはサポート・ミュージシャンとしても活躍しており、ササキは三四少女、ぱんだは板歯目などに貢献。サーキット・イヴェントへの出演などでも話題を集めるなか、8月6日に初のフィジカル作品となるファースト・アルバム『RE POP!!』(KOGA)をリリースする。