アーバンギャルドのシンガーによるソロ3作目は、そう滅多に他者の作品で名前を見かけることがない角松敏生のプロデュースというレアな体験。過去作で聴かせてきた欧州風味薫るメランコリックなメロウ感は引き継ぎつつ、角松のバンド・メンバーも随所に配しながら、よりラグジュアリーな仕立てに。角松が詞を託した冒頭曲“不眠”でエロスを感じさせつつも、大半で聴ける彼女自身の詞は、恋愛に対して切実で臆病、性別を問わずに共感を呼びそうな人間味を感じさせるもの。ラストを飾るサディスティックスのカヴァー“THE TOKYO TASTE”で披露する角松とのデュエットもたまらなくテイスティーだ。2010年の初ソロ作を新装復刻した『Film noir ultime』も併せて、共に夜を明かしたい。