2025年も残りあとわずか。12月に入ってからメディアやリスナーが今年のベストアルバムを次々と発表しています。Mikikiではタワーレコードのスタッフに2025年のマイベスト邦楽アルバムを募りました。洋楽編とあわせて、それぞれの選盤とコメントをどうぞお楽しみください。 *Mikiki編集部
松本健太(渋谷店)
音楽への情熱と変わらぬ信念、硬い結束力で紡いだ、バンド名義〈kanekoayano〉のファーストアルバム。
カネコアヤノ名義の前作『タオルケットは穏やかな』では、日々の不安をやさしくすくいあげて、わたしたちをそっと包み込んでくれるような作品でした。
この2年間の活動で取り巻く環境も変わり、バンドメンバーの脱退など紆余曲折もあったなかで、①“noise”は前作の〈意思〉を継ぐかのように紡がれた歌詞と、途中からの男声コーラスとのユニゾンは、石のように硬いバンドとしての〈意志〉をも窺えるようなサビに聴こえて、もう泣けちゃいます。
そして、レコーディングに同伴していたカネコアヤノの愛猫、晩ちゃんの奇跡的なオルガンが聴けるラストからシームレスに次曲へ繋ぐ流れも必聴です(クレジットにも記載されている晩ちゃんが愛おしい……笑)。
新たなサポートメンバーにドラムスSEI NAGAHATA、パーカッション宮坂遼太郎を迎えて再録された⑥“さびしくない”では、平凡で素朴に思えるどんな小さな幸せでも自分で見い出し、それらを大事に抱えながら、一日一日を大切に生きられる自分であれたらと思わせてくれる、冬に聴きたくなる楽曲です。
壮大な景色をも窺えるような7分に及ぶ名曲⑨“石と蝶”。生きていると色んな価値観に触れることがあると思います。誰かに言われた何気ない一言にトゲがあることだってあるし、それで傷ついたりもする。でもこの楽曲を聴いていると、いつだって自分の選択肢を大事にして、ありのままの自分を生きていていいんだと思わせてくれるような気がします。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。そんな〈しっかりとした気持ちでいたい〉というカネコアヤノの本質が、このバンドサウンドに表れているように感じます。
些細なことでくよくよしてしまう過去の自分も、カネコアヤノの音楽を通じて〈ちょっとは認めてあげよう〉と思える自分に出会えたことも、kanekoayanoの音楽のおかげです。いつもいつも生きる糧になっています。素敵な音楽を本当にありがとうございます!!
間違いなく、2025年のマスターピースな一枚です!!!!!
小畑雄巨(神戸店)
前作ではギタリストのオオスカがリードボーカルを担っていたが、この2作目ではベーシストのマナミオーガキへ完全にシフト。ボーカルが入れ替わってもNikoんのサウンドにブレはなく、むしろ先行曲“さまpake”を筆頭に、歌メロはぐっとキャッチーかつ多彩に。
2000年代から2010年代にかけての邦オルタナやポストロックの系譜に連なる作品だと思うが、とにかくメロディーが良い。めちゃくちゃいい。どの曲も、いつチャートヒットしてもおかしくないポップ性を備えながら、陰と陽が入り交じる繊細な揺れを描いた詞と相まって、侘び寂びすら漂わせる。それを歌うオーガキのボーカルもひじょうに存在感があり、柔らかく親しみのある声質ながら、解放させず内側に溜め込んでいく感情の密度や重さを感じさせ、ポップでありながらずしりとした響きも残す。
一方、オオスカはギターに専念することで、歌に寄り添い、際立たせ、あるいは歌のないパートでは選手交代と言わんばかりに楽曲を牽引するなど、自在なアプローチを展開。メリハリの効いた演奏で立体的に空間を造形していくその楽曲構築センスは極めて高い。
この2人の強烈な個性と、それを衝突させることなく尊重し高め合っているバランスがNikoん最大の強みであり、このアルバムは邦ロックならではの発展的な未来を強く期待させる作品だ!


