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様々なことから楽想を得る独創的な作曲

――『umi』に入っている“Progress”は、〈The Herb Alpert Young Jazz Composer Awards〉で賞を受けた楽曲ですね。学生時代のラージアンサンブルによる演奏はYouTubeにアップされていますが、今回はトリオによるアプローチです。

鈴木「もともとは学校の課題としてボストンで書いた曲です。〈スケールを基にした部分とコード進行を基にした部分という2つの局面がある曲を作りなさい〉ということで書いたんですが、書いているうちにどんどん楽しくなって、課題に準拠してないものができあがって(笑)。それでもいいかと思って提出しましたが、自分の中でもずっとお気に入りの曲で、何度も何度も演奏しています」

――『umi』は全曲、鈴木さんのオリジナル曲ですが、楽想は普段から浮かぶ感じですか? それとも、書くぞと決意して譜面に向かう感じですか?

鈴木「私は作曲モードに入るとしばらく抜けられないところがあるので、期間を設けて、その間はライブもせずに作曲しています。ピアノに向かって3、4時間録音して、気分転換に散歩に出かけたらちょっといい感じの鼻歌が降りてきて、それをその場で録音して、家で譜面に起こすこともありますね。

基本的には、歌えるメロディでありたいんです。声で表現したときに不自然ではないものを作れるようにとは考えています」

――曲名も曲想も、印象的なものが揃っています。

鈴木「“Unsolved Cubes”はルービックキューブからアイデアを得ています。6面が揃わなくて、ずっとぐちゃぐちゃして試行錯誤している様子を表現しました。“KOMA”は独楽の動きから着想しました。“Walking Walking Walking”は浜辺をずっと歩いているようなイメージで書いた曲です。いろんなことを感じて毎日が過ぎていくけれども、進んでるような、でも進んでないような。景色も変わらないし、足も取られるし、とつとつと1日が終わるイメージですね。

このアルバムは最初“umi”から始まって、最後、また出だしに帰ってくるようなアルバムになっていると自分では思っています」

 

3人で作り上げる、想像を超える音楽

――こうした独創的な鈴木さんのコンポジションを演奏するということは、北沢さんと小美濃さんにとってどんな感じなのでしょうか?

北沢「端的に言うと、〈何を求められているのかわからない〉というのはありますね(笑)。わかるのは、ドラマーとして求められているのは〈カーペット的な役割〉ではないんだろうなということぐらいです。他のバンドではそれを求められている場合も多いのですが。

(小美濃と)2人で何かを作って持っていくというより、多分3人それぞれが33.333%ずつ、何かミュージカル・ステートメントを持ち寄っていく必要があるんだなと」

小美濃「譜面を見たら、普通はフォーカスするポイントがわかるけど、良くも悪くもそのポイントがわからない(笑)」

北沢「普通は譜面を渡された時点でダイレクションが決まっていて、〈こういうことをやってください〉みたいなのが文章や記号で書いてあったりしますが、このトリオで渡される譜面にはそういう情報は一切ないんです(笑)」

――放任主義?

鈴木「事前に〈こういうふうにします〉とメンバーに伝える方法もあると思うんですけど、私には〈自分が想像できない曲にしたい〉という気持ちがあるんですよね。例えば“umi”は、恐ろしくてなかなかバンドに持っていけないというか、どういうふうにトリオでサウンドするのかわからない曲ですし、それをレコーディングするのは勇気がいること、ドキドキすることなんです。でも、きっとこの2人なら私にちょっとだけ見えている風景がさらに大きくなるようなものを持ってきてくれるだろうという確信があったので録音に至りました。名義は鈴木瑶子トリオになっていますが、本当に3人で作り上げている音楽だと思います」

北沢「楽譜は本来ならばその作曲者の中で鳴っているものの再現性を高めるためのシートにしか過ぎないんですが、彼女が渡してくるのは下書きですから(笑)」

鈴木「(笑)。2人に何かをお願いするときは、〈こういう音で〉と言うよりも〈こういうイメージが欲しいんです、こういう情景が見たいんです〉と言った方がイメージに近いものが来るんです。“umi”にしても、どう演奏していくかの打ち合わせをしたときに譜面を見ながら私が伝える言葉は、〈ここではまだ潜ってます、上を見ないでください〉〈どんどん青くなっているところです〉といった感じです(笑)」

北沢「それで我々も〈なるほど、そうか〉と思ってしまう(笑)」

鈴木「本当なら〈そこはまだピアニッシモにしておいて、フォルテに行かないでください〉といったことを話すと思うんですが、このトリオの打ち合わせで音楽用語は出ないですね。〈これはお腹がすいてる曲です〉みたいな感じです(笑)」

――それはユニークで楽しいですね。

小美濃&北沢「大変ですよ……」

一同「(笑)」

鈴木「だからリハーサルが不可欠です。下書き状態の譜面をライブの日に持っていって、〈これはお腹がすいてる曲です〉と説明しても〈なんだこいつ〉と言われると思うので(笑)」

――インタビューが掲載されている頃には全国ツアーも始まっていると思いますが、最後に再び『umi』について一言お願いいたします。

鈴木「このアルバムは、私自身でも〈いいな〉と思う曲が聴くたびに違ってくる作品です。そのときそのときの心情で見えてくる情景が変化するアルバムになっていると思いますので、いろんなときに、いろんなシチュエーションで聴いてもらえたら嬉しいです」

 


RELEASE INFORMATION

鈴木瑶子 『umi』 Yoko Suzuki Music(2025)

リリース日:2025年7月23日(水)​(7月18日先行販売開始)
品番:YSM-0002
​価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. umi
2. Longing
3. Progress
4. Unsolved Cubes
5. Time Goes By
6. KOMA
7. Tipsy Whimsy
8. Walking Walking Walking

■MEMBERS
鈴木瑶子 Yoko Suzuki - Piano, Composer, Producer
小美濃悠太 Yuta Omino - Double Bass
北沢大樹 Hiroki Kitazawa - Drums

All songs composed by Yoko Suzuki
Recorded at TAGO STUDIO TAKASAKI on Aug. 23rd, 2024

■ENGINEERS
松下真也 Shinya Matsushita - Recording / Mixing / Mastering Engineer
時田佳奈 Kana Tokita - Assistant Engineer
フェケテ・アッティラ Fekete Attila - Concert Technician from FAZIOLI​

■VISUAL ARTISTS
宮林妃奈子 Hinako Miyabayashi - Artworks
津島岳央 Takahiro Tsushima - Designer​

■PHOTO ARTISTS
高敏智 Christ Gao - Photographer
茜茜 Shirley- Hair&Makeup

 

LIVE INFORMATION
YOKO SUZUKI TRIO 2nd Album「umi」リリースツアー 2025

出演:鈴木瑶子(ピアノ)、小美濃悠太(ベース)、北沢大樹(ドラム)​​)

リリース記念ライヴ in 東京
2025年8月17日(日)東京・恵比寿 BLUE NOTE PLACE
開場/開演:18:00/19:00
料金:2,200円(10歳未満 1,100円)
TEL:03-5789-8818
WEBSITE:https://www.bluenoteplace.jp/

第2弾
2025年9月5日(金)山梨・甲府 コットンクラブ
開場/開演:18:00/19:30
料金:4,000円(当日 4,500円)
TEL:055-233-0008

2025年9月6日(土)長野・松本 Storyhouse Cafe&Bar
開場/開演:18:30/19:00
料金:3,500円(当日 4,000円/高校生以下 2,000円)
TEL:080-4355-6283
E-MAIL:storyhousecafebar@gmail.com

新坂町/寺ジャズ2025
2025年9月28日(日)宮城・仙台 浄土宗 充国寺
開場/開演:12:30/13:00
料金:3,500円(学生 1,500円/小学生以下 無料)
WEBSITE:https://forest-bird.net/terajazz/

2025年9月29日(月)福島・白河 茶房瑠
開場/開演:18:30/19:30
料金:5,000円
TEL:0248-21-9172

2025年10月4日(土)東京・渋谷 BODY&SOUL
開場/開演:18:30/19:30
料金:4,700円(学生 3,000円)
TEL:03-6455-0088