
面白い作品にはルールがない
――撮影現場では即興演奏も行ったんですか?
「TVシリーズのときはやりました。役者のみなさんが芝居をされている近くで演奏していくんですけど、それはそれで楽しかったです。そのときは山口ともさんという僕の大好きなパーカッショニストと2人でガラクタでバリバリバリとやりまして。
でも、バランスが難しかったです。すぐそばで芝居をやっているし、こちらの音がそれにかかりすぎてもいけない。マイクの位置とかいろいろ気にしました。実験的な感じで、オダギリさんも〈やりますか!〉とおっしゃってくれたからやったんですけど、面白い経験でした。

あとはTVシリーズで使用していた曲も、オダギリさんの希望でいくつか映画の劇中で使っています。オダギリさんは、僕がどんどん即興で作っていく音楽に関してなにも言わないんです。とにかく僕はイメージを膨らませて、たくさん曲を作ってはオダギリさんに渡して、それをシーンに合わせてオダギリさんがセレクトしていく。オダギリさんはそういった流れを楽しめる人だから、僕もこれだけたくさん曲を作れたんだと思います」
――森さんのなかで劇伴を作るにあたって、なにか方向性のようなものはあったんですか?
「最初から即興ですね。その日スタジオに行って、〈よし、今日はこの楽器を使っていい音楽を作ろう〉って感じです。小さな個人スタジオで作っていたんですけど、メロトロンがあって大活躍しました。メロトロンは音がいっぱいあって、いろんなことができるんですよ。EGO-WRAPPIN’でも使っているけど、今回もたくさん使用しました」
――劇中に森さん率いるバンドが登場しますが、その場面では音楽が全面に出てきて、とても印象的でした。
「映画に出てくるキャバレーのハウスバンドで、ミルト・ジャクソン・カルテットにかけてGJQ(ゴッシュ・ジャズ・カルテット)というバンドです。劇中で深津絵里さんが“色彩のブルース”を歌うシーンがあるんですね。そのままやるのも普通だなと思っていたんで、ドアーズみたいなバンドがジャズをやったらということをイメージして、ベースレスのアレンジにしました。

演奏にはちょうどミルト・ジャクソンを聴いていたこともあって、ヴィブラフォンを清水一登さんに頼んで、TUCKERさんにはキーボードでベースの音を出してもらいました。そこにドラムスで山口さんが加わるんだから、もう普通のジャズバンドではない編成ですよね(笑)。ベースをキーボードでやると少しチープな感じになるというか、いい感じに冷たさが出るんです。そんなちょっとカルトなジャズバンドで深津さんが歌うことも、いい違和感ですよね」
――まさに森さんが解釈するジャズバンドですね。
「フェイクジャズ、インチキジャズというか、ロックバンドがジャズやってますみたいな。こういうチープな感じの方がカッコいいときがあるんですよ。
いい作品を作ることも大切だけど、面白い作品を作るというのはまた違うじゃないですか。面白い作品にはルールがないですからね。ルールを無視しているのに、なんでこんなに名曲なんだ!という音楽に自分は魅力を感じるから、どうしてもそっち寄りになってしまうんです」