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見る者が想像する余地を残したアートワーク

――今回のEPのアートワークができた経緯についてもお伺いしたいです。

ジュン「実は、意図的に表題曲だけを坂内さんに共有したんです。多くの情報を送りすぎて、依頼を必要以上に複雑にしたくなかったので(笑)。最初はインストバージョンと歌詞をお送りし、その後にボーカル入りのバージョンを共有しました」

坂内「そうだったんですね(笑)。表題曲のメロディーを聴いた時、タイトルの響きもあったと思うんですが、自然と全体のイメージが浮かびました。歌詞の中の〈街〉、〈今は1人でくる〉、〈道〉といった言葉が印象に残って、そこからだんだん絵のディティールが決まっていった感じです。

今回カセットテープのビジュアルがメインだったこともあって、サイズ的にシンプルな構成がいいのかなと思っていたのですが、ジュンさんが表題曲に絞ってくれたおかげでイメージが複雑になりすぎず、丁度いい密度で描けた気がします」

――坂内さんの絵は一貫して静謐さが漂っていて、感情が抑制された印象を受けます。

坂内「ドラマチックなシーンが得意ではないんです。絵に関してもなるべく説明しすぎないようにしたい。例えば、男女が2人いて手をつないでいたら、それがどんな関係性かは大体察しがつくと思います。でも、そうではなく距離を持たせたい。そうすることで、見る人が想像を働かせてくれると思うんです」

ジュン「その〈直接的に訴えかけない〉という姿勢は、今回のアートワークのラフを見た時にも感じました。僕は、そこがすごく好きなんですよ」

 

歴史のパラドックス、日常のセレンディピティ

――ジュンさんの音楽はシティポップとして語られることが多いですが、坂内さんの描くイラストは静かで抑制されていて、〈シティ〉という言葉はあまり連想できません。坂内さんは〈シティ〉という言葉から何を思い浮かべますか?

坂内「僕にとっての〈シティ〉はやはり東京です。生まれも育ちも東京なのですが、東京って情報が溢れていて刺激も多く、色々なことがすごい速度で流れていってしまい、あまり記憶に残らない。逆に言うと、ほったらかしてくれる街というか、自分から情報を取りに行かない限りは押し付けて来ない――そういった空気を感じています。なので、普段は都心から離れた場所で作業をしているのですが、〈何かが足りない〉と思った時は刺激を得るために街に出かけることもあります。

実は僕が初めて展示を行った時、〈東京〉というタイトルをつけたんです。東京では物事が目まぐるしく変化していますが、そんな中にも何てことのない日常や、人々の意識に留まらなかった出来事がたくさんあって、そういった世界を描きたいと思ったんです。例えば、イギリスに行った時も、間違えて乗ったバスで降りたところにレコード屋があったり、裏路地に入ったら犬がいたり、自分がそこにいなければ出会わなかっただろう景色が好きで、描きたいと思っているんです」

――東京で生まれ育ったからこそ、そう感じるのかもしれませんね。一方、ジュンさんはご出身が神奈川で、その後オーストラリアに移住し、自然豊かな環境に身を置かれています。坂内さんと対照的にのどかな環境からシティポップが生み出されるというのも、とても興味深いです。

ジュン「それは意図したものではないのですが、僕はもともとパラドックスに強い興味を持っているんです。僕はミュージシャンとしての活動とは別に学術的な研究活動をしていて、その中で歴史に見られるさまざまなパラドックス――つまり〈本来こうなるはずだったのに、結果として逆の方向へ進んでしまった〉事例――を研究対象として扱うことがあります。そうした出来事がなぜ起こるのかを探るのが面白いんです。

こうした探究の中で重要なキーワードになるのが、セレンディピティだと思います。セレンディピティとは〈偶然がもたらす幸運の発見〉を意味しますが、この考え方に坂内さんとの共通点を感じます。今回のコラボについても、まさにセレンディピティによって思いがけない良いケミストリーが生まれることを期待してます(笑)」