
自分たちの後ろに広がっているものを連結させる
那倉「Dexさんは、好んで新しいものを聴くわけではありませんか?」
Dex「そうっすね。どちらかと言うと、moreruは基本的に〈新しいものを作ろう〉というより、昔からある、後ろに広がっているものをツギハギしまくって、最終的に自分たちのフィルターを通して出力する感じですね。それが、結果的に新しいものに聴こえることがあるという」
那倉「では、元々の源流にあるものの具象レベルが変わらないままコラージュされているという」
Dex「そうですね」
那倉「境界線が溶けた自分たちの音楽を作ろうというよりは、グチャグチャにならずに、境界線が曖昧にならず、ハッキリしているミクスチャーだという。歌詞もそうですもんね」
夢咲「はあ」
那倉「新しい音楽を作る場合って、境界線が曖昧なものを自分たちでこさえなきゃいけない場合も多々あるじゃないですか? そういうことを実は、moreruはやっていない。凄く冷静に構成しているバンドだと思うんです」
夢咲「曲のレベルでは……」
Dex「無茶苦茶そうだし、曲が変わった方が面白いですよね。変わらないと飽きるし。やっぱ、〈面白いじゃん〉みたいなものが好きなんで」
那倉「楽しませたい?」
Dex「ビックリさせたいですね」
夢咲「俺も、色々なフォーマットを使ってても、境界線はハッキリと〈こっからここまではこれ〉って引いてる」
那倉「〈連結させる〉という印象を強く受けます」
夢咲「〈連結させる〉感じは凄くある」
那倉「歌詞でも、実は、みちるくんが自身のほとばしるパトスに任せて書いている感じではない印象を如実に受けます。演劇空間をどうアレンジするかの構成要素がハッキリしていて、そのなかで役柄とキャラクターと実存を同時に演じるという」
夢咲「歌詞は、推敲・編集の作業が凄くあるので」
Dex「それは、やっぱDTM世代っていうのがデカいと思います。グリッドがちゃんとあるっていう」
夢咲「そう。詞作においても、(酒を)飲んで書いて、冷静になってから編集するっていう」
那倉「歌詞にも、DTM的な制作が及んでるっていうことですね。それで、アントナン・アルトーと三上寛が繋がっていたり」
これは伝統的なロックのアルバム
那倉「あと、今回はノイズが減りましたね」
夢咲「減ったっすね! だから、那倉さんがガッカリするかなって……」
那倉「やめてよ(笑)」
Dex「ノイズは、ミックス的にエフェクティブに使うというか、聴かせどころをちゃんと設定して、そこでしっかり鳴らすみたいな使い方に変わったかな。ノイズで埋め尽くすのは散々やったから、もういいかなって」
那倉「それは、今話してきたベクトルとも一致しますよね。境界線を曖昧にすることから距離を置いたということですね」
夢咲「このアルバムでノイズを使うところだけで使ったというのには理由があって、それは、いわゆる伝統的なロックのアルバムだと思って作ったからなんです」
那倉「ジャケにもその感じが出ていますね」
Dex「ジャケからスタートしてます」
那倉「〈誰々の何枚目〉みたいな?」
夢咲「色んなひとの4枚目を聴きましたね。でも、意外と〈誰々の何枚目〉とか、パッと一致しないんですが」
那倉「それは、自分たちが作ってきたものを大事にしてるということでもありますね。確かに、そういった色々な思いも、このデザインは封じ込めている感じがします。そういう意味でも、エクストリームミュージックの話より邦楽やJ-ROCKのサイドから話をする方が妥当なバンドになってきた面もあると思います。エクストリームミュージックのなかでの細分化というより〈編曲・アレンジがエクストリームミュージック〉と言いますか」
Dex「どれほどポップスっぽくなっても、結局ブラストと絶叫――絶叫って言っても、技巧的なスクリームじゃなくて発狂の絶叫ですが、そこにエクストリーム性を引き受けさせれば、エクストリームミュージックたり得るのかなと」
那倉「モチーフ、最小単位としてのエクストリームミュージックですね」