
絶叫で台無しにすることで、メロディーがより美しくある
那倉「他のエクストリームミュージックではない部分のエッセンスに関してはいかがでしょう。例えばJ-ROCKとか?」
Dex「それはメロディーとかですか?」
那倉「例えば、僕は〈承認資本系J-ROCK〉〈自意識系J-ROCK〉と呼んでいるんですが、大森靖子とか神聖かまってちゃんなどとの距離感はいかがでしょうか?」
Dex「それは、バンドとしてどうこうというより、みちる個人の方が距離は近いんじゃないかな」
夢咲「これはどこまで話していいんだか……。 恥ずかしいってわけじゃないけど……」
那倉「バンド全体としては、みちるさん個人の歌はどのように措定しているのですか?」
Dex「やっぱり、いいメロディーがあった方がいい曲だとシンプルに思っています。こいつ(夢咲)はいいメロディーを作れるから、それを乗せてるっていう。さっき言ったノイズの聴かせ方も、よりメロディーを効果的に聴かせられるように、このアルバムではそうしていると思うし。
『山田花子』はエクストリーム一辺倒というか、〈暗黒〉みたいな感じで、『呪詛告白初恋そして世界』くらいから自分がミックスするうえで意識が変わって。それを今回も受け継いで、演奏でブラストや絶叫も聴かせつつ、通っている芯が歌のメロディーなんです」
那倉「それは、Dexさんもそう強く欲望しているということでしょうか?」
Dex「そうですね。自分もソロプロジェクト(that same street)をやっていて……」
那倉「ちなみに、あの叫び声を出せるドラマーとバンドをやるのは辛くないですか、みちるさん」
夢咲「そうそう。他のメンバー、みんな俺より声量あるし……」
Dex「自分のソロをやっている上でも似た意識があって、つまり、〈絶叫とメロディー〉なんです。絶叫で引き立てるというか、台無しにするイメージなんですね。台無しにすることで、メロディーがより美しくあるというか」
那倉「エクストリームミュージックのイメージのなかで歌を隆起させていることは、that same streetの作品と並べてみるとわかりやすいですね。歌のメロディーのポイントに全部絶叫をあてて考えているというか、頂上に絶叫を配置させていて、本作の拡散しているイメージをキュッとまとめあげて引っ張っている感じと言いますか」
Dex「そうそう。その方が強度が増すんです」
全ての風景をファスト風土にできたら
那倉「楽曲とはまた別のアレンジメントについての話題となりますが、moreruの様々な断面から学校空間、スクールカースト空間を転移させるというテーマが見て取れます。ジャージの着用率の高さもそうですし、“仰げば尊し”“蛍の光”に似た、学校の節目で歌われる合唱や唱歌を意識したカノン進行に近いコードの循環進行、歌詞も呪詛に満ちた〈卒業生の言葉〉のようです。
学校空間をモチーフにする意図はやはり、同じものが社会においても再生産されていると感じているからだと思います。その再生産されているものに固着しながらも、否定の身振りを見せて、リスナーに意識を向けさせ、〈考えろ〉と促す姿は、先ほども言ったように啓蒙的な側面があると思います。
ここまでの話は散々、言われてきたことなので、それらを前提としながら、Dexさんが以前Xで〈全ての風景をファスト風土にできたら、きっと素晴らしい世界になる〉と投稿していたことから展開しつつ、紐解いていきたいと思います」
全ての風景をファスト風土にできたら、きっと素晴らしい世界になる
— Dex🎭️ (@thatsamestreet) August 14, 2025
Dex「ああ、それはそう思います」
那倉「それは三浦展の『ファスト風土化する日本』から来ている概念だと思うんですけど、いわゆる文化資本の蓄積を無効化させる志向性の発露だと思うんですよ。〈全てイオンにしちまえ〉ということですから。学校の話にどう繋がるかというと、義務教育の場って表向きは〈出発点が平等〉みたいなツラをしていますが、文化資本の蓄積と偏在が常に既にあるわけじゃないですか。しかも、毎年新しい子どもを迎え入れることでこの構造を再生産しているし、それを送り出しもする。だけど、この構造って、わからないひとにはわざわざ言わないと案外見えづらいものじゃないですか」
Dex「そこは、俺とみちるでは考え方が違うと思うんです」
夢咲「俺は路地や商店街の居酒屋が潰れたりしてほしくないな。そういう意味では結構保守。それはなんでだろうって、振り返って気づいたけど、俺は山とか川がめっちゃ好きなんすよ。月とか雲とか空とか」
那倉「私、若い時に言われたことがありますよ。〈花鳥風月を愛でるようになったら人間おしまいだ〉って。それは保守化だからダメだと」
夢咲「だから、自分のなかにある〈学校性〉からも逃げていかなきゃとは思ってるんですよ。そういう意味で自分は、結構保守的だよなって思います」
那倉「それは、昭和アングラ教養主義が関係している?」
夢咲「そうかもしれません。俺は80年代の日本の文化から始まっていて、Dexは90年代の洋楽から始まっていて、それは2人の圧倒的な差異だと思うんだけど」
Dex「そうだね。自分はそんなに日本のロックにルーツがないから」
夢咲「ニルヴァーナから始まってるからね」
Dex「グランジキッズだったから」
那倉「そうか。じゃあ、グローバリゼーションの恩恵って言い方もできるのか。現代的な考え方としては先端的に思えちゃいますね」