
グランジへの違和感と憧れ
tomi「で、ここまで誰もグランジに触れないっていう(笑)」
――そこはしっかり訊いておきたいです(笑)。
tomi「ニルヴァーナのことは中学生の頃から知っていて、“Smells Like Teen Spirit”とか、『In Utero』に入っている曲も聴いてみたんですけど、あのちょっといびつというか、グリーン・デイみたいに真っすぐでクリーンなロックじゃない感じが、当時の僕にはよくわからなかったんです。でも、大学生になって一周回ってあらためて聴いたら、めっちゃ新しく感じて」
Nakada「その感覚めっちゃわかるなあ」
――私も近いかも。中学生の頃に初めて聴いたときは、粗削りなハードロックっていうイメージで、〈だったらガンズ・アンド・ローゼズ聴くわ〉みたいな。でも気が付いたら、ニルヴァーナの『In Utero』やレディオヘッドの『Pablo Honey』しか聴けなくなっていた、みたいな時期がありました。
tomi「グランジってそんなに技巧的なことはやってないけど、いびつさや音がとにかくカッコいい。そこに憧れたんです。
それで作曲に活かせないかなと思うようになるとともに、EDMっぽい曲のストックもありつつ、グランジっぽい曲が増えてきたんです。だったらそういう曲をまとめた作品があってもいいよねっていうのが、今作に繋がっています。グランジに影響された曲をパッケージにして一区切りつけた、みたいな感覚ですね」

歪んだサウンドと鬱屈した精神性への共鳴
――life crownにとってのグランジ像をさらに詳しく訊かせてもらえますか?
Watanuki「僕がグランジを好きになったのはコロナ禍が大きかったですね。大学に入って〈大学ってめっちゃ楽しいじゃん、こんな最高なところがあるんだ〉と思っていたら、パンデミックでぜんぶ取り上げられた。〈なんだよこれ、クソすぎないか〉って思いながら、かと言ってやることもないから音楽を掘り出して、その頃ちょうどtomiが“怪物の家”を作ったタイミングだったこともあって、ニルヴァーナを聴いてハマったんですよね。
グランジって当時のポップへの逆襲みたいなニュアンスもあったと思うんです。ニルヴァーナの、あのギターの爆音と歌詞でぶん殴るみたいな音楽が、抗おうとしてもどうにもならないパンデミックと世間の流れに苦しむ自分に刺さったんですよね。だから僕個人としてはグランジってそういうものです」
tomi「僕が勝手に持っているイメージはとにかくギターが歪んでる、ということ。たくさんのアンサンブルのなかでハーモニーして機能しているというよりは、感情と呼応したギターの音ですね。そういう意味ではボーカルに近い存在というか。他の楽器との調和を重視したらこんなに歪ませないだろうっていうのを、歪ませる権利がある音楽みたいなイメージですね」
――そこを担うギタリストとしては?
Fujiwara「実はバンドでそういう〈グランジとは〉みたいな話はしたことがないんですよ(笑)。でもtomiの言う〈感情と呼応した音〉というのは僕なりにわかります。グランジって卑屈なことを歌っているイメージがあって、だから過度な歪みがマッチすると思うんです」
tomi「とは言え、僕らが思うグランジのイメージって、あくまで僕らなりの見解で、実際はいろんな音楽性のバンドがいるじゃないですか。ニルヴァーナとパール・ジャムじゃ全然違うし、アリス・イン・チェインズなんて〈ハードロックじゃね?〉みたいな。だからある意味では、言ったもん勝ちというか」
Nakada「だから、サウンドというよりは精神性から受けた影響のほうが強いかもしれません」
――オリジナルグランジの感覚に近い再現性もありつつ、それだけではない。今の時代だからこそ鳴る音、life crownにしか出せない音とのクロスオーバーによるオリジナリティが魅力的な作品だと思いました。そこはリズム隊が寄与している部分が大きいんじゃないかと。
Nakada「ギターはグランジをグランジたらしめるもっとも大きな要素じゃないですか。それに対して、僕はグランジに寄せるというより、自分の好きなドラムのフレーズをちょくちょく入れて、採用されたら嬉しい、みたいな感覚でした。リズムによって〈グランジだけどグランジっぽくない〉みたいな感じを出したい意図もあったので、伝わってよかったです」
Watanuki「僕も、グランジというジャンルに向かうというよりは、メンバーのみんながいいと思えるフレーズや音を目指せばおのずといい曲ができる、というイメージでした。3人の出す音や背景を理解すること。それはこのバンドでベースを弾く難しさでもあり楽しさでもありますね」