吉祥寺を拠点に活動する4人組バンド、life crownがニューEP『sound stuff』をリリースした。テーマとして掲げたワードは〈Western-Tokyo Grunge〉。エモーショナルなギターの轟音や、ポップながらもどこか不穏でひねくれたメロディとともに、鬱屈とした感情を吐露するリリックには、まさに1990年代オルタナティブロック/グランジからの影響をダイレクトに感じる。
しかし彼らの音楽は過去の再現だけに留まらない。随所に見られるリズムの遊び心や、2010年代~20年代を生きてきたからこその新鮮味も感じられる、明らかなニュータイプ。彼らはどのようにして今の音楽性に辿り着いたのか。メンバー全員にその変遷を訊くとともに、作品の魅力について語ってもらった。
シティポップ、歌謡曲、EDM……4人のバラバラな音楽ルーツ
――みなさん吉祥寺出身なんですか?
tomi(ギター/ボーカル)「いえ、みんな田無が地元の音楽仲間です。練習やバンド活動を実際に行っていた場所が吉祥寺だったんで、吉祥寺のバンドと言っていいかなと」
――古くからの仲間で、本格的にlife crownとして活動をし始めたのが2020年?
tomi「そうですね。もともと中学生の頃に僕とドラムの(Teppei)Nakadaが西東京市の市民会館で一緒に演奏していたんです。高校生になって僕とギターの(Kohei)Fujiwaraとベースの(Yuya)Watanukiでまた別の市民会館で演奏するようになって、4人で集まってlife crownを始めたのは大学生になってから。それが2020年ですね」
――今作『sound stuff』では、その音楽性を指して〈Western-Tokyo Grunge〉という言葉を掲げていますが、もともと、みなさんはオルタナティブロックやグランジを好んで聴いていたのですか?
tomi「それが、音楽の趣味はみんなバラバラで。僕らはグランジが好きでグランジをやろうって始めたバンドではないんです。だから〈Western-Tokyo Grunge〉というスタイルは、僕らの今のモードであって、永久的なものではありません」
――となると、みなさんの音楽的なルーツが気になります。
Yuya Watanuki(ベース)「僕は高校で流行っていたクリープハイプ、RADWINPSやポルカドットスティングレイといった、ロキノン系と呼ばれていたようなロックが好きで。あとは、親の影響でビリー・ジョエルとかアバのような70年代を中心とした〈ベストヒット洋楽〉みたいなをよく聴いていましたね。竹内まりやさんや山下達郎さんといったシティポップも好きです。グランジやオルタナティブロックは、life crownを始めてから聴くようになりました」
Teppei Nakada(ドラムス)「僕のロックの原点はL’Arc〜en〜Cielですね。ドラムのyukihiroさんからめちゃくちゃ影響を受けて、セッティングや叩き方もマネしていました」
Kohei Fujiwara(ギター)「僕は親の影響もあって歌謡曲、松田聖子さんやサザンオールスターズなどの作品をよく聴いていて、自分から音楽を積極的に聴くようになったのは中学生の頃に出会ったスピッツでした。高校生になって、tomiからグリーン・デイを教えてもらって、サブスクに課金して洋楽をいろいろ掘るようになって、という感じですね」
tomi「自分のいちばん古い音楽体験で記憶に残っているのは、両親の聴いていたビリー・ジョエルです。自分自身で音楽を掘るようになったのは中学生に入ってからで、原体験になった曲はグリーン・デイの“Oh Love”。
そこからオルタナティブロックやインディーロックを聴くようになり、高校生の頃はEDMをめちゃくちゃ聴いていました。エレクトロのマッシブな音にハマって、なかでもマーティン・ギャリックスが好きだったんです。彼がきっかけでDAWを触るようになり、作曲を始めました。そんな感じで大学に入るまでは完全に洋楽至上主義。
でも、大学生に入ってきのこ帝国を知り、〈日本語の歌詞でもいい音楽って作れるかもしれない〉と思ってロックっぽいものも作るようになりました。そして初めてできた曲が、僕らの1stシングル“怪物の家”ですね」
