(左から)Teppei Nakada、tomi、Kohei Fujiwara、Yuya Watanuki

吉祥寺を拠点に活動する4人組バンド、life crownがニューEP『sound stuff』をリリースした。テーマとして掲げたワードは〈Western-Tokyo Grunge〉。エモーショナルなギターの轟音や、ポップながらもどこか不穏でひねくれたメロディとともに、鬱屈とした感情を吐露するリリックには、まさに1990年代オルタナティブロック/グランジからの影響をダイレクトに感じる。

しかし彼らの音楽は過去の再現だけに留まらない。随所に見られるリズムの遊び心や、2010年代~20年代を生きてきたからこその新鮮味も感じられる、明らかなニュータイプ。彼らはどのようにして今の音楽性に辿り着いたのか。メンバー全員にその変遷を訊くとともに、作品の魅力について語ってもらった。

life crown 『sound stuff』 life crown(2025)

 

シティポップ、歌謡曲、EDM……4人のバラバラな音楽ルーツ

――みなさん吉祥寺出身なんですか?

tomi(ギター/ボーカル)「いえ、みんな田無が地元の音楽仲間です。練習やバンド活動を実際に行っていた場所が吉祥寺だったんで、吉祥寺のバンドと言っていいかなと」

――古くからの仲間で、本格的にlife crownとして活動をし始めたのが2020年?

tomi「そうですね。もともと中学生の頃に僕とドラムの(Teppei)Nakadaが西東京市の市民会館で一緒に演奏していたんです。高校生になって僕とギターの(Kohei)Fujiwaraとベースの(Yuya)Watanukiでまた別の市民会館で演奏するようになって、4人で集まってlife crownを始めたのは大学生になってから。それが2020年ですね」

――今作『sound stuff』では、その音楽性を指して〈Western-Tokyo Grunge〉という言葉を掲げていますが、もともと、みなさんはオルタナティブロックやグランジを好んで聴いていたのですか?

tomi「それが、音楽の趣味はみんなバラバラで。僕らはグランジが好きでグランジをやろうって始めたバンドではないんです。だから〈Western-Tokyo Grunge〉というスタイルは、僕らの今のモードであって、永久的なものではありません」

――となると、みなさんの音楽的なルーツが気になります。

Yuya Watanuki(ベース)「僕は高校で流行っていたクリープハイプ、RADWINPSやポルカドットスティングレイといった、ロキノン系と呼ばれていたようなロックが好きで。あとは、親の影響でビリー・ジョエルとかアバのような70年代を中心とした〈ベストヒット洋楽〉みたいなをよく聴いていましたね。竹内まりやさんや山下達郎さんといったシティポップも好きです。グランジやオルタナティブロックは、life crownを始めてから聴くようになりました」

Teppei Nakada(ドラムス)「僕のロックの原点はL’Arc〜en〜Cielですね。ドラムのyukihiroさんからめちゃくちゃ影響を受けて、セッティングや叩き方もマネしていました」

Kohei Fujiwara(ギター)「僕は親の影響もあって歌謡曲、松田聖子さんやサザンオールスターズなどの作品をよく聴いていて、自分から音楽を積極的に聴くようになったのは中学生の頃に出会ったスピッツでした。高校生になって、tomiからグリーン・デイを教えてもらって、サブスクに課金して洋楽をいろいろ掘るようになって、という感じですね」

tomi「自分のいちばん古い音楽体験で記憶に残っているのは、両親の聴いていたビリー・ジョエルです。自分自身で音楽を掘るようになったのは中学生に入ってからで、原体験になった曲はグリーン・デイの“Oh Love”。

そこからオルタナティブロックやインディーロックを聴くようになり、高校生の頃はEDMをめちゃくちゃ聴いていました。エレクトロのマッシブな音にハマって、なかでもマーティン・ギャリックスが好きだったんです。彼がきっかけでDAWを触るようになり、作曲を始めました。そんな感じで大学に入るまでは完全に洋楽至上主義。

でも、大学生に入ってきのこ帝国を知り、〈日本語の歌詞でもいい音楽って作れるかもしれない〉と思ってロックっぽいものも作るようになりました。そして初めてできた曲が、僕らの1stシングル“怪物の家”ですね」

 

グランジへの違和感と憧れ

tomi「で、ここまで誰もグランジに触れないっていう(笑)」

――そこはしっかり訊いておきたいです(笑)。

tomi「ニルヴァーナのことは中学生の頃から知っていて、“Smells Like Teen Spirit”とか、『In Utero』に入っている曲も聴いてみたんですけど、あのちょっといびつというか、グリーン・デイみたいに真っすぐでクリーンなロックじゃない感じが、当時の僕にはよくわからなかったんです。でも、大学生になって一周回ってあらためて聴いたら、めっちゃ新しく感じて」

Nakada「その感覚めっちゃわかるなあ」

――私も近いかも。中学生の頃に初めて聴いたときは、粗削りなハードロックっていうイメージで、〈だったらガンズ・アンド・ローゼズ聴くわ〉みたいな。でも気が付いたら、ニルヴァーナの『In Utero』やレディオヘッドの『Pablo Honey』しか聴けなくなっていた、みたいな時期がありました。

tomi「グランジってそんなに技巧的なことはやってないけど、いびつさや音がとにかくカッコいい。そこに憧れたんです。

それで作曲に活かせないかなと思うようになるとともに、EDMっぽい曲のストックもありつつ、グランジっぽい曲が増えてきたんです。だったらそういう曲をまとめた作品があってもいいよねっていうのが、今作に繋がっています。グランジに影響された曲をパッケージにして一区切りつけた、みたいな感覚ですね」

 

歪んだサウンドと鬱屈した精神性への共鳴

――life crownにとってのグランジ像をさらに詳しく訊かせてもらえますか?

Watanuki「僕がグランジを好きになったのはコロナ禍が大きかったですね。大学に入って〈大学ってめっちゃ楽しいじゃん、こんな最高なところがあるんだ〉と思っていたら、パンデミックでぜんぶ取り上げられた。〈なんだよこれ、クソすぎないか〉って思いながら、かと言ってやることもないから音楽を掘り出して、その頃ちょうどtomiが“怪物の家”を作ったタイミングだったこともあって、ニルヴァーナを聴いてハマったんですよね。

グランジって当時のポップへの逆襲みたいなニュアンスもあったと思うんです。ニルヴァーナの、あのギターの爆音と歌詞でぶん殴るみたいな音楽が、抗おうとしてもどうにもならないパンデミックと世間の流れに苦しむ自分に刺さったんですよね。だから僕個人としてはグランジってそういうものです」

tomi「僕が勝手に持っているイメージはとにかくギターが歪んでる、ということ。たくさんのアンサンブルのなかでハーモニーして機能しているというよりは、感情と呼応したギターの音ですね。そういう意味ではボーカルに近い存在というか。他の楽器との調和を重視したらこんなに歪ませないだろうっていうのを、歪ませる権利がある音楽みたいなイメージですね」

――そこを担うギタリストとしては?

Fujiwara「実はバンドでそういう〈グランジとは〉みたいな話はしたことがないんですよ(笑)。でもtomiの言う〈感情と呼応した音〉というのは僕なりにわかります。グランジって卑屈なことを歌っているイメージがあって、だから過度な歪みがマッチすると思うんです」

tomi「とは言え、僕らが思うグランジのイメージって、あくまで僕らなりの見解で、実際はいろんな音楽性のバンドがいるじゃないですか。ニルヴァーナとパール・ジャムじゃ全然違うし、アリス・イン・チェインズなんて〈ハードロックじゃね?〉みたいな。だからある意味では、言ったもん勝ちというか」

Nakada「だから、サウンドというよりは精神性から受けた影響のほうが強いかもしれません」

――オリジナルグランジの感覚に近い再現性もありつつ、それだけではない。今の時代だからこそ鳴る音、life crownにしか出せない音とのクロスオーバーによるオリジナリティが魅力的な作品だと思いました。そこはリズム隊が寄与している部分が大きいんじゃないかと。

Nakada「ギターはグランジをグランジたらしめるもっとも大きな要素じゃないですか。それに対して、僕はグランジに寄せるというより、自分の好きなドラムのフレーズをちょくちょく入れて、採用されたら嬉しい、みたいな感覚でした。リズムによって〈グランジだけどグランジっぽくない〉みたいな感じを出したい意図もあったので、伝わってよかったです」

Watanuki「僕も、グランジというジャンルに向かうというよりは、メンバーのみんながいいと思えるフレーズや音を目指せばおのずといい曲ができる、というイメージでした。3人の出す音や背景を理解すること。それはこのバンドでベースを弾く難しさでもあり楽しさでもありますね」

 

わからなさや引っかかることを音楽で鳴らす

――曲作りのプロセスについて教えてください。

tomi「僕の曲作りがEDM、マーティン・ギャリックスの作り方を参考にするところから始まっているので、基礎となるものはDAWで各パートをトラックごとに分けてある程度作るんです。そこにメンバーそれぞれのプレイヤーとしての色を入れてもらうみたいな」

――グランジということ以外に、作品のコンセプトやテーマ性はありましたか? 曲順や歌詞の流れがとてもよかったので。

tomi「特にないですね。と言うのも、僕はストリーミングでしか音楽を聴かないんです。CDとかレコードを買ったことなくて、プレイヤーも持ってません。ほんと今のサブスク世代を指してよく言われる、アルバムやEPを最初から最後まで通していくという習慣がないタイプで。

でも、〈前はこういう曲を作ったから、次はもうちょっと変えたい〉みたいな感覚で曲を作っていると、自然と流れが生まれてくるんですよね。そして最終的に曲順を整える。今回は“chaser”で始まって“shoes”で終わるっていうのがいいなって。“chaser”は〈何かを追う者〉という意味で、“shoes”は足跡。何かを追ったり考えたりしたあと、振り返ってみるとそこには足跡があるっていう流れですね」

――“chaser”って、SNSでフォロワーを集めるのに必死な人、という意味もありますよね?  そのことなのかなと思っていました。

tomi「〈何かを追う者〉ってなんでも当てはまるじゃないですか。それがSNSのフォロワーみたいな他人の目や評価かもれないし、夢や目標、健康かもしれないし。とにかく何かを追い求めているときの気持ちについて書きました」

――〈諦めかけて/諦めきれないそんな自分が/大嫌い〉という一文もあるように、tomiさんの歌詞って、基本的に鬱屈としていますよね。

tomi「性格的にも、いつもどこかにネガティブ要素は持っていますね。あと、個人的な考えとして、ポジティブなことは音楽にしても意味がないというか、〈幸せになりましょう〉みたいなものは気分が乗りにくいんですよね。それよりも自分でもよくわからない気持ちとか、何か引っかかっていることとか、そういうもののほうが音楽にしやすい」

――“chaser”はNakadaさんの言ったように、グランジのようでグランジでない、life crownのシンボルとしてわかりやすい曲だと思いました。サイケデリックな感じやグランジ時代にはなかった2000年代後半~2010年代のベッドルームポップっぽさも垣間見えますし。

tomi「意識していたわけでないんですけど、確かに。曲の背景については、誰かに言われて気付くことがけっこうありますね。そういうベッドルームポップとかインディーポップは中学生の頃に聴いていたから、意識せずとも引き出しに入っているから出てくる。だから、作曲作業中は、自分が昔聴いていたものをもう一回聴いている感覚もあるんですよね」

 

自分だけの〈アンダーグラウンド〉

――“アンダーグラウンド”はリズムの遊び心がとりわけおもしろいですね。

Nakada「tomiが作ったイントロのフィルが象徴的で、デモの段階ではドラマーだと思いつかない、人力でドラムキットを叩くということを前提にすると出てこないフレーズだったんです。その感じを活かすにはどうすればいいか。それによって生まれる違和感がバンドの特徴になったらいいなって」

――1分40秒で一瞬3拍子が入るところも、そこで気分が変わるんですよね。

tomi「僕が拍とかをわかってないんですよね」

Nakada「ストレートに一曲聴くのって集中力がいるし、そういう遊び心をついつい入れたりますね。

あと、僕はlife crownに入るまで、神保彰さんなどフュージョンからの影響などもあって、シンプルな8ビートとかをほとんど叩いてこなかったから、ストレートなロックでも〈これでいいのか?〉とか思っちゃうんですよね(笑)」

Watanuki「だからベースはなかなか大変ですよ(笑)。Nakadaはそんな感じでtomiにわからないようにけっこう仕掛けてくるし、tomiもFujiwaraも音の世界観が強いから、そこにみんなが納得してもらえるような音やフレーズをはめ込むのは難しい」

――“アンダーグラウンド”というタイトルで、〈オーバーグラウンドは他人に託したの〉、〈オーバーグラウンドじゃギターが歪まないの〉とも歌っている。しかし、こういうインタビューを受けるなどの行為は、オーバーグラウンドに出たいということの表れじゃないですか。

tomi「あの曲は、自分たちをアングラって言ってる時点でそれはアングラでも何でもないっていう皮肉ですね。だから歌詞でアンダーグラウンドとは言いつつ、曲はオーバーグラウンド寄りだったりするんです。でも、自分で言っておいてなんですけど、〈アングラがいいよね〉って楽しんでる人を、〈そう言ってる時点でアングラじゃない〉と批判するのも違うと思うっていう」

――つまりは?

tomi「そういう皮肉や冷笑はよくない。〈好きなものは好きでいいじゃん〉って。それがほんとうにアンダーグラウンドなのかって、けっこうどうでもいいみたいな」

Nakada「文化的に何がアンダーグラウンドでオーバーグラウンドかではなく、自分だけの場所と言う意味でのアンダーグラウンドみたいな」

 

ロックバンドの初期衝動を込めたEP

――“shoes”は、メロディやリフのループの中毒性が基盤になっているように感じました。そこに展開をつけることでロックのダイナミックさや、このバンドならではのひねくれ感も感じられる、とても興味深い曲ですね。

tomi「先ほども言いましたが、僕の曲作りのルーツはEDM、マーティン・ギャリックスで、彼が使っていたから僕も真似して買ったFL StudioというDAWは、ループを前提に曲を作ることを推奨しているソフトなんです。だから僕の考え方として、〈気持ちいいところは延々とループしておけばいいんじゃない?〉っていうのがあって、そこに日本語の歌ものとして活きる展開をつけていくことが基本的なスタンスです。

そのなかで“shoes”は、もっとも自然体でできた曲。シューゲイザーっぽい音が作りたくてギターを弾いていたら出てきたリフを繰り返すところから始まって、ただ好きな音をはめていった感じでしたね。

作品全体としても、『sound stuff』というタイトルの〈stuff〉には〈モノ〉とか〈コト〉という意味があって、それくらいラフなニュアンスで完成しました、っていう意味があって。全編にわたって僕らの〈今出したい音〉を出すことができた、とても満足のいく作品です」

――最高ですね。ではほかのお三方的にとって、この作品の推しポイントは?

Watanuki「さっきtomiも言ってましたが、“chaser”始まりの“shoes”終わりっていう、曲順がめっちゃいなって」

Nakada「〈大きい音を鳴らすって最高だよな〉っていう、ロックバンド初期の衝動を大切にできたEPです。tomiの書く歌詞もすごく好きで、僕らってそんなに友達が多いタイプじゃないし、孤独を感じることが多かったりもするなかで、〈一人でも大丈夫だよ〉って言ってもらえてる気がして、そういう人に刺さる作品だと思います」

Fujiwara「僕らが活動し始めた頃からやってきた、グランジというスタイルに共感してくれた人たちがいたからこそ出せた作品です。だから、関わってくれた人の気持ちも大切にしつつ、4人ならではのエッセンスもしっかり入っている。

たとえば、“クオリア”だったら、1拍目を強調して終わるのが歌謡曲っぽいと思ってて、“津軽海峡・冬景色”や“赤いスイートピー”もそうですし。とても意味のある作品ですね」

――グランジ一本勝負のバンドではないとわかったので、ここからどうなっていくのか楽しみです。

tomi「このあとまたグランジを擦るのはなんか違うって思うし、そう言いつつそのグランジっぽさも残した作品になるかもしれないし、いずれにしても過去の再現はしたくない。そのとき出したい音を出し続ける。そこに誰かが何かを感じてくれるものを作り続けたいですね」

Watanuki「いろんな人に自分たちの作品を聴いてもらいたいと思っています。僕はドラッグストアでバイトしていたことがあって、自分たちの曲が有線から流れて、ロックとかに興味がない人にも届いていたら、いいなって想像しちゃうし。そういうことがずっと続いたらいいなと思いますね」

Nakada「今回のEPは〈結果的にグランジ〉みたいな感じだったから、今度は音楽的に目指すところを共有して作るのもおもしろいかな、とか思ってみたり」

Fujiwara「やることは変わらないですよ。生活しているなか、いろんな音楽を聴いているなかで、曲ができていく。ときには強く生き様も刻んでいきたいし、それを聴いた人たちが、いい評価も悪い評価も含めていろいろ言ってくれることが、その先の道に灯りを点してくれると思うんです。その事実のうえで自分たちのことも大切にして活動していく。それを続けていれば、音楽人生はもっとよくなっていくと思います」

 


RELEASE INFORMATION

life crown 『sound stuff』 life crown(2025)

■CD
リリース日:2025年12月17日(水)
品番:UXCL-378
価格:1,500円(税込)
配信リンク:https://orcd.co/sound-stuff

TRACKLIST
1. chaser
2. アンダーグラウンド
3. 夢遊
4. クオリア
5. shoes

 


PROFILE: life crown
小・中学時代の友人で2020年に結成、4人組のロックバンド。グランジやシューゲイザーの要素を感じさせる荒々しいギターサウンドとリフを軸に、エレクトロサウンドやヒップホップビートなど幅広い音楽性に挑戦し、ポップなメロディと落ち着いた歌声で語られる内向的詞世界には、全ての若者が抱える危うさや脆さが秘められている。現在、出身地である西東京をベースに活動し、〈Western-Tokyo Grunge〉というテーマを掲げ、痛快なまでにグランジサウンド全開の新作EP『sound stuff』をリリース。
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