
わからなさや引っかかることを音楽で鳴らす
――曲作りのプロセスについて教えてください。
tomi「僕の曲作りがEDM、マーティン・ギャリックスの作り方を参考にするところから始まっているので、基礎となるものはDAWで各パートをトラックごとに分けてある程度作るんです。そこにメンバーそれぞれのプレイヤーとしての色を入れてもらうみたいな」
――グランジということ以外に、作品のコンセプトやテーマ性はありましたか? 曲順や歌詞の流れがとてもよかったので。
tomi「特にないですね。と言うのも、僕はストリーミングでしか音楽を聴かないんです。CDとかレコードを買ったことなくて、プレイヤーも持ってません。ほんと今のサブスク世代を指してよく言われる、アルバムやEPを最初から最後まで通していくという習慣がないタイプで。
でも、〈前はこういう曲を作ったから、次はもうちょっと変えたい〉みたいな感覚で曲を作っていると、自然と流れが生まれてくるんですよね。そして最終的に曲順を整える。今回は“chaser”で始まって“shoes”で終わるっていうのがいいなって。“chaser”は〈何かを追う者〉という意味で、“shoes”は足跡。何かを追ったり考えたりしたあと、振り返ってみるとそこには足跡があるっていう流れですね」
――“chaser”って、SNSでフォロワーを集めるのに必死な人、という意味もありますよね? そのことなのかなと思っていました。
tomi「〈何かを追う者〉ってなんでも当てはまるじゃないですか。それがSNSのフォロワーみたいな他人の目や評価かもれないし、夢や目標、健康かもしれないし。とにかく何かを追い求めているときの気持ちについて書きました」
――〈諦めかけて/諦めきれないそんな自分が/大嫌い〉という一文もあるように、tomiさんの歌詞って、基本的に鬱屈としていますよね。
tomi「性格的にも、いつもどこかにネガティブ要素は持っていますね。あと、個人的な考えとして、ポジティブなことは音楽にしても意味がないというか、〈幸せになりましょう〉みたいなものは気分が乗りにくいんですよね。それよりも自分でもよくわからない気持ちとか、何か引っかかっていることとか、そういうもののほうが音楽にしやすい」
――“chaser”はNakadaさんの言ったように、グランジのようでグランジでない、life crownのシンボルとしてわかりやすい曲だと思いました。サイケデリックな感じやグランジ時代にはなかった2000年代後半~2010年代のベッドルームポップっぽさも垣間見えますし。
tomi「意識していたわけでないんですけど、確かに。曲の背景については、誰かに言われて気付くことがけっこうありますね。そういうベッドルームポップとかインディーポップは中学生の頃に聴いていたから、意識せずとも引き出しに入っているから出てくる。だから、作曲作業中は、自分が昔聴いていたものをもう一回聴いている感覚もあるんですよね」

自分だけの〈アンダーグラウンド〉
――“アンダーグラウンド”はリズムの遊び心がとりわけおもしろいですね。
Nakada「tomiが作ったイントロのフィルが象徴的で、デモの段階ではドラマーだと思いつかない、人力でドラムキットを叩くということを前提にすると出てこないフレーズだったんです。その感じを活かすにはどうすればいいか。それによって生まれる違和感がバンドの特徴になったらいいなって」
――1分40秒で一瞬3拍子が入るところも、そこで気分が変わるんですよね。
tomi「僕が拍とかをわかってないんですよね」
Nakada「ストレートに一曲聴くのって集中力がいるし、そういう遊び心をついつい入れたりますね。
あと、僕はlife crownに入るまで、神保彰さんなどフュージョンからの影響などもあって、シンプルな8ビートとかをほとんど叩いてこなかったから、ストレートなロックでも〈これでいいのか?〉とか思っちゃうんですよね(笑)」
Watanuki「だからベースはなかなか大変ですよ(笑)。Nakadaはそんな感じでtomiにわからないようにけっこう仕掛けてくるし、tomiもFujiwaraも音の世界観が強いから、そこにみんなが納得してもらえるような音やフレーズをはめ込むのは難しい」
――“アンダーグラウンド”というタイトルで、〈オーバーグラウンドは他人に託したの〉、〈オーバーグラウンドじゃギターが歪まないの〉とも歌っている。しかし、こういうインタビューを受けるなどの行為は、オーバーグラウンドに出たいということの表れじゃないですか。
tomi「あの曲は、自分たちをアングラって言ってる時点でそれはアングラでも何でもないっていう皮肉ですね。だから歌詞でアンダーグラウンドとは言いつつ、曲はオーバーグラウンド寄りだったりするんです。でも、自分で言っておいてなんですけど、〈アングラがいいよね〉って楽しんでる人を、〈そう言ってる時点でアングラじゃない〉と批判するのも違うと思うっていう」
――つまりは?
tomi「そういう皮肉や冷笑はよくない。〈好きなものは好きでいいじゃん〉って。それがほんとうにアンダーグラウンドなのかって、けっこうどうでもいいみたいな」
Nakada「文化的に何がアンダーグラウンドでオーバーグラウンドかではなく、自分だけの場所と言う意味でのアンダーグラウンドみたいな」