©Yasuo Yamabuki 

息の合った姉妹が奏でるブラームスの密度濃い音の対話

 ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲はヴァイオリンとピアノが対等な位置を備え、両者が雄弁な音の対話を繰り広げるように作曲されている。技術的にも表現力においても難度が高いとされているが、非常に魅力的な作品ゆえ多くのアーティストが愛奏し、その真価を伝えている。ヴァイオリニストの小林美樹とピアニストの小林有沙はこれまで何度もこのソナタで共演し、演奏を深めてきた。そして2025年7月25日、東京Hakuju Hallにおいてライヴ収録を行った。

小林美樹, 小林有沙 『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集』 Exton(2025)

小林美樹「ライヴ録音ですので非常に緊張しましたが、姉とのデュオなので余分な気遣いをすることなく演奏に集中することができ、安心して演奏できました」

小林有沙「ピアノは伴奏ではなくヴァイオリンと対等な関係で、ピアノが曲を支えています。第1番冒頭ではテンポをピアノが決める形で、ヴァイオリンが入って来やすいように指揮者のような役割も果たします。この3曲に関し、ふたりで数多くの録音を聴いて参考にし、いまの自分たちだからできる演奏を目指したいと思いました」

美樹「第1番は中学1年のころから特別な作品になっています。当時、第1番第1楽章をシェリングの演奏でアラームにセットし、毎朝この音楽で目覚めました(笑)。中学3年のとき国内のコンクールで第2番第1楽章が課題曲となっていたため取り組み、心揺さぶられる音楽だと感じました」

有沙「第2番はとりわけヴァイオリンとピアノとの対等な対話が多く登場し、歌の要素も随所に見られ、ピアノ・ソロも登場します。テンポや雰囲気、場面の展開を作り出していくのが難しいですね。第3楽章は前進していくエネルギーに満ちていますので、私たちの演奏も途中かなり情熱的なデュオになっています」

美樹「第3番は楽章ごとにキャラクターの違いが感じられ、ひとつのドラマを描いているようです。おだやかさ、迷い、愛にあふれた面など、いろんな感情が渦巻いているようで、興味深いですね」

有沙「第3番はピアノの音がとても多い。音域も広く、ヴァイオリンをかき消してしまうくらい(笑)。第2楽章が特に好きでここでは伴奏に徹し、私自身もヴァイオリンの音を堪能しながら音楽を支えます」

 互いを尊重し自由に演奏できるというこのブラームスは、親密で奥深く心に響く。